追い風
吹けば何かと 困る事など 無いはず なのだが クリおく 涅槃は 彼方に 流る 岸壁 昇り 滑る 指かけ 腕力 だのみの 願い 届ける 風雨逆巻く 喜ぶ未来は 唯一の悲しみ グレーの 下敷き 映る鏡の 面影はどこか 裂いた手紙の 妖しさに似る 柿を潰した 汁にて染める
君と一緒に
歩く坂を 繰り返す日 流す闇に 墓のありか ほりて気づく 涙の数は 触覚に変わる
冬晴れ
キリリと肌刺す 結晶は 滑やかなる声 打つ駒に カラリ 切り突く 白刃は 血を絡めつつ 溶けゆく空に 雄飛沸き観る 泡沫の 断面とくりと なぞり嗅ぐ 抱えて耐えて 晒して負けた 想ひは焼却 恩讐咲きぬ 区切り弾き 返すまなこ 螺旋を引き 敵切り突く ここは遥か 旅路蒼く 菜など食いて 眠る間皆無 何故か螺旋 目の前星の 冷気定めつ 捩れ気高く 明日何故に 返す龍樹 列まだ描いて いるんか千登勢 屋根に猫放し 俳句叩き 黒にまどろみ 流歌は似れる 君の隙間 埋めて海の 闇の飛沫 美鶴舞鶴 マイルスデイビス 立つ舞台に 目の前行きかふ サンタクロース
幸せとは
脳内に快楽物質を大量に出して気持ち良くなること。
言葉あそび
幸せふいにして 最強を標榜し 目指すのは 虚無なれど 煮えたぎる 思い乗せ 勝ち割った 鉄兜 真っ二つ 花は咲く 干す酒は 唄に為し 砂丘削る 野を奇し 水断ちて
日の出
海岸線が右手に見えていた。
神山春紀は、左手でハンドルを握り、右手の指にタバコを挟んでいる。窓から風が入り、軽くウェーブした髪を撫でてゆく。
助手席には、半井美幸が気怠い表情で、暗く冷んやりとした街並みを眺めていた。
『もう何年経つのかしら』
乾いたトーンで呟く。
『まだ、彼が海に潜ってる気がするわ』
花岡大和は、学生の頃から海に潜るのが好きだった。
魚を獲る。大きな魚を銛で刺し、焼いて食べる。
骨を口から吐き、ニンマリ歯を見せる顔は、誇らしげだった。
『俺は海を喰らうのが好きなのさ』
カラカラ笑いながら言うのである。
『あいつは、海になったよ』
神山は煙を、吐き出しながら低く言った。
潤んだ眼で前方を睨む。
その日、花岡は、眼を爛爛とさせて海へ入って行った。
それきり、戻っては来なかった。
水平線が、赤らんできた。
大和は陽を獲りに行ったのだと思った。
言葉遊び
杉泣き指す指 鋭くヒカリテ 淡き影行く 履きつつ観る夢 幻夢はまぐわい 石楠花飾りて 酒など煽りて