冬やすみ
冬やすみを齧る。齧ったそれを小刀で削る。色を付けたく箸で刺す。ベートーヴェンの運命が流れ、驚いて障子の向こうの宇宙を観し時、冬やすみが弾けていた。冬休みに味覚を感じ、手のひらが緑にチクチクする。甘さを覚え幸福にあふれ、それを机の下へ秘す。ちぎっては喰みちぎっては喰み。あまりの柔さに涙を流す。
手ぶくろ
手ぶくろの内部を覗いてみると、青の部屋に出た。床も壁も天井も真っ青である。あまりに青かったので、発狂して笑った。喉から直線的でカクカクした音色がまるで、レスポールギターのように、はじけた。やはり青色で、やっぱり青かいっ。と、ツッコミをいれながらニヤニヤした。女が入ってきた。予期していたように全身青色だったので、やはりな。と、カッコつけてみた。そんな事言ってる場合じゃないでしょ。と、女が言うので、状況を思い出しワンワン泣いた。もういいから、もういいから、と、床をこじ開け赤い宇宙へ身を投げた。
変わらないものはない
見ている。ゆらりと白煙が漂う。鼻から『ゆぅるぅ』と肺へと入れる。しばし呼吸を止め、粒子を細胞に行き渡らせる。十分に満喫し、口と鼻の両方から、『ふぅしゅぅ』と吐いてゆく。煙はドス黒く変化していた。これから行く健康診断の結果は良好な物になるだろう。
クリスマスの過ごしかた
眼が覚めた。時計を見た。6時半。障子からは、朝の陽がやんわりと漏れ出ている。光の粒子がキラキラしていて、軽い温度を感じさせる。身体を起こしてkitchenへ向かう。ラジカセの電源を入れ、ジャニスをかける。ビートが効いており、しゃがれた声が心地よい。コーヒーを淹れる。なんの拘りもないのでインスタント。胃の中に招き入れてから茹で卵を丸ごと口に収める。数口に分ける場合、黄身がこぼれるのでそれを回避する。本をパラパラ読みながら今日一日のプランを頭に巡らせる。はたと思った。クリスマスじゃん。
イブの夜
寂しさがつのると、メロディを作る。作った旋律を紐状にして、新体操のリボンみたいにクルクルする。クルクルしたのを投げ上げてキャッチ。キャッチしたのを色付けする。色付けしたのを液体にして、渦をつくる。渦の中に吸い込まれてその先は君の体内。