金雀花

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8/21/2024, 4:12:33 AM

『さよならを言う前に』

母の葬儀のとき
最後に父が棺にそっと触れた
それがたまらなかったと
焼き場で従兄弟が涙をためて教えてくれた

十年以上経った今でもわたしの中に残っている

父はもう
母が亡くなったことも
憶えていないけれど

8/20/2024, 5:10:31 AM

『空模様』

空の、模様。
どんなに暑くても
寒くても
空を見上げる

今の季節なら
もくもくとした入道雲

日が暮れる前の
夕焼けの赤と
夜の青が
縞模様になっているのを
帰り道に眺める幸せ

そして
だんだんと日が落ちるのが早くなり
朝の空が高くなると
秋が来たなと思う

8/19/2024, 3:23:36 AM

『鏡』

小さい頃は祖母の三面鏡が憧れで
思春期には学校のトイレで前髪巻いていたり

いつから、鏡を見るのが苦手になった

自信がないのか現状を見たくないのか
鏡の中の自分と目が合わないようにしている


でもそれじゃ“今の”自分が可哀想

自分とちゃんと向き合って
自分のことを愛してあげられたら
見える景色も変わるのかも

8/18/2024, 6:15:07 AM

『いつまでも捨てられないもの』

親から頂いたものたち
親の匂いがするもの

初めて一人暮らしをするときに
母が買ってくれたフライパン
同じ趣味を持つ父が
撮ってくれたDVD
夫婦で旅行に行ったときのお土産
直筆の手紙
写真
洋服

・・・

引っ越しのたびに
思い切って捨てようと
どこかで見切りをつけないと
と思うのだけれど
結局
箱の中にそっと忍ばせる

8/16/2024, 3:16:39 AM

『夜の海』

今年の秋、ついに終わってしまう舞台の
終盤にかかる曲

いつ消えるかわからない主演の
全てを燃やすような振り付けと
衣装の赤

背景の海に浮かぶ月はいつの間にか消え

それを後ろの少し高いところから見ている
引き継ぐべき彼ら

その立ち位置の美しさに
何度観るたび
そしてそれを思い出すたび
胸の奥が揺れる

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