手を離すと、
風船はみるみるうちに
遥か遠くへ、遠くへと旅立った

それって、私が無理やりに
ここに留めていたみたいで、
なんかちょっと不服だよ

ああ、でももう手元にないんだから
どうだっていいや、
さようなら、地球を旅しておいで。

どーーしても青空と海が見たくて
今から海を見に、行ってくる！

待って、まだ一言いい忘れてた。

あのね、幸せだったよ。
別れることが最初からわかってても
また付き合いたいくらいには

小さいとき
マンホールの裏側はどうなっているのかなとか、
トイレはどこに流れているのかなとか
そんなことを思っていた。

お散歩をするたびに発見があって
空想の世界をイメージした

わたしたちが見えない側の
世界はどうなっているのだろうか

さっそく帰ってきてから、
クレヨンでぬりぬりお絵かきしたのだった。
何十年ぶりかに発見されたその絵は、
やっぱりチラシの裏側に描いてあった。

朝、歯磨きをしていた。
なんかよくわからんピザの欠片みたいなやつが
歯ブラシの間にはさまった。

なにさ、と思って、
ぽーんとゴミ箱に投げ捨てた。
朝から快活な音がした。

この歯ブラシもう何ヶ月も使ってたわ、
そう思って家を出た。

帰りの電車、今日もいろいろ決断したはずなのに
なぜか歯ブラシとの別れが心に残っていた。