あと1キロくらいかしら
もう少し、あとひといき
あそこまでたどり着かなくても
たどり着いた場所をゴールにすれば
きっと幸せになれる
泣かないで、泣かないで
だんだん空気も重くなって
空がどんより、雨がパラパラ降ってきた
自分を幸せにするのは自分だとわかってる
それでも、どこかで苦しい道を選びたがるのは
心がまだ泣き足りないからだろうか
それならば、あの坂道を
一気にのぼって、終わりとしよう
あの時あなたが言ってくれた言葉を、
お守りとして大事に
胸の奥に包んで仕舞っているから、
たまに思い出しては
その言葉を頼りにしているから、
だからこそ、
変わったのはあなたではなく、私だったことに
さっきまで気づかなかった。ごめん。
今の自分はなぜかめちゃくちゃ腐っていて
正しい言葉が入ってこない
だから、いまから明けない夜を探しに
特急電車に乗るのです。
南の方に行けば夜は明けないでしょうか
それとも海に潜れば竜宮城について
時間がおかしくなるでしょうか
いっそのこと、その時計を壊しましょうか
そこの壁に矢印が書いてあります。
右に進めば西口改札にたどり着くのです。
ここで切符を買うのです。
私を駆り立てるな!と苛立ちながら、
結局お家へ帰るのです。
明けない夜は、おふとんのなかの
自分の世界にあると信じて
ふとした瞬間に
隣の席のカップルの女の子と目が合った
目が少し曇っているのがわかった。
彼女は、サッとすぐに目を逸らした
彼女がずっとお話ししているのに
彼氏はスマホに夢中だから。
彼女の目の色は孤独と不安と悲しみと
少しだけまだ期待の色が残っていた。
彼女はがんばっている、じゅうぶん。
イヤリングがキラキラ揺れるたび
そこには誰にも受け取られることなく
散っていく、わずかな愛情が確かにあった
どんなに離れていても、
居場所や連絡先を知らなくても
もう天国に行ってしまった人に対してでも
名前を言わずに
自分の声で一言だけ伝えられるとしたら
何の言葉を送りますか?