元気かなと思って、
久しぶりにどうぶつの森に集まってみた
みんな長らく不在の私の登場に
喜んでくれて、とりあえずリンゴをあげた
それから海に潜ったりもしてみた
そういえばと思って、
部屋に入ったら虫が出てたけど、
何年か前に集めた
くまのぬいぐるみが待ち構えていて、
ひそやかな幸せを感じた
自分の気持ちにしっかりと耳を澄ます
コーヒーをお気に入りのマグカップに入れて、
風に揺られる木々を眺める
コーヒーのぐるぐるの渦巻きを見ていたら
過去の思い出がぐるぐる巡り出した
保育園の小さな庭の脇の蛇口
泥団子を握った手をゴシゴシ洗いながら
そのとき、ふと自分は
どんな大人になるんだろうと思ったのだった
目を閉じた
風を感じた
木々たちのゆらめきが、
過去をめぐる私の心を表しているかのようだった
花は可憐で、
か弱いものだと思っているかもしれないが
実はかなり生命力に溢れていて
生き物としてものすごく強いと思う
リビングにあったヒヤシンスは
しばらくするうちに巨大化して
机に這いつくばり
エイリアンのようだった
部屋を探索するように
葉を伸ばし、目を見開くように開花した
古い地図を見ていたようで
今はないコンビニとか
昔塾の帰りにお母さんと行った中華屋さんとか
サッカーグラウンドとかがあった
当時の匂いとか気持ちとかが
ありありと思い出されて
思わずぎゅっと自分を抱きしめた
みんなが大人になっていくように見える
私は街を歩く
ぐんぐん歩く
ぐんぐんぐんぐん歩いて、ふと気づく
私も私で、昔の自分が何が好きだったか
何をお守りに生きていたか、覚えていない
つまり、昔の私とはたしかに変わったのだ
でも、それはみんなのように
大人になったからではなくて、
そうすることでしか生きられないからだ
今の私が好きなものは曇りの天気、
秋、ワインとかだけど
昔の私は夏とか晴れとか、
ラムネソーダとかが好きだった
いや、雨とか冬とか、麦茶とかが好きだったかも。