Seaside cafe with cloudy sky

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11/11/2024, 10:23:38 AM

【飛べない翼】

二度と捜せない My heart 飛べない翼

by ∶ Sing Like Tarking


この頃は最高のナンバー揃いでした(*>_<*)ノ✦

このグループと杉山さん、稲垣さんはいまだに何度も聞き惚れ直しております✦

✦ coming soon !✦

11/10/2024, 11:14:03 AM

【理想郷】← change order 【ススキ】

◀◀【鋭い眼差し】からの続きです◀◀

⚠⚠ BL警告、BL警告。誤讀危機囘避ノタメ、各〻自己判斷ニテ下記本文すくろーるヲ願フ。以上、警告終ハリ。 ⚠⚠




















ゲーアハルト、そして残業社員たちとしばしの別れを果たして二階の事務所を出、吹き抜け階段を降りていったアランはやがてエントランスのロビーに到った。此処ならどんな言葉で言い合っても彼らの仕事の妨げにはならないだろう ―― そんなことを考えながらアランは、さてどこで電話を掛けようかとあたりをぐるりと見渡した。間接照明のみのために一階全体は仄暗いが、道側を向いたエントランスはシルヴィガラスから射し込む街灯の明かりや走り過ぎていく車のライトが乱反射して程よい明かり採りの場となっている。加えて気まぐれに拡散する光がいびつにぼやけて見えてノスタルジックな雰囲気を誘い、その風情に魅了されるがままにアランは壁に背をもたれさせてくつろぎ、此処へ来た目的をしばし放置することにして、ささやかな光のイリュージョンにうっとりと見惚れた。

それにしても、なんとも不思議な旅になったものだと思い返す。今朝出発したときは、まさかこんなドタバタ珍道中になるとは想像もしていなかった。仕事から離れてリフレッシュするためだけのつもりだったのに、奇妙なつながりが新たな出会いを引き起こしていった。
イダ・スティール・プロダクツ ―― バルマーグループにおいてもっとも重要な、生産部門に数多く連なるうちの優良製品工場のひとつだ。その企業のことは、一年と半年程前だっただろうか、それより少し前にCMO、最高マーケティング責任者に就任した取締役が初めて企画したマーケティング会議で呼び集められた、数あるグループ製品会社のリストにその名があったのをなんとなく覚えている程度だった。それから不定期に開催されるようになった会議にイダの専務、ゲーアハルトは毎回律儀に出席し、しかも前日にはすでに本社入りして、会議準備で取締役にこき使われるアランやヘルマンの助っ人を買って出てくれたり、取締役との短い会談や他に前日入りしている関連会社の代表たちと事前ミーティングをしたりと、かなり積極的にはげむ彼とはちょっとした顔見知り程度になった。常に人当たりよく穏やかで朗らかでスマートで、嫌味や押し付けがましさといったものは微塵も感じさせないハンサムな紳士。こんな人が専務として率いている工場とはいったいどういった感じなんだろう ―― そんな素朴な疑問を抱いたことがあったが、昨日突然に思いついた旅の出会いでその疑問が解消されたのである。アランは心に残った今日の素敵な邂逅での人々へ思いを巡らせた。

イダの社員で今日最初に登場したエルンスト ―― 彼とは二年前にも会っていた。本社への異動、そして取締役やその関係者との悶着のせいで、居心地のよかった南の支社にいたときの記憶が薄れ、問われるまで彼を思い出すことは出来なかったけれども、一度記憶がよみがえってしまえばはずみがついて、他にもポツポツと思い出すことがあった。同じワークショップの参加者で、企業名も名前も覚えていないけれど、彼がある女の子とよく一緒に話していたのを思い出した。さらにあの当時の彼は今よりもさらに短い髪型で、たしかバズカットだったと思う。だから印象が違っていてすぐには思い出せなかったんだ。スポーツでもやっていたのだろうか。旅の途中にでも聞いてみよう。もちろん女の子のことも。また真っ赤になってしまうかな?
それからマルテッロ……はまだ謎の人物だし、料理上手で魅力的なクラーラも社員ではないから置いておいて、お次はギュンター。エルンストとはなんだか兄弟のような年若い叔父の一人、親族の中でのムードメーカーっぽい存在だ。チャラいイメージであるがアーティスト肌なのだろう、デザインセンスやコーディネート感覚には感服させられた。彼の作品であるイダの施設建築物の全体構成、意匠設計、構造デザイン、機能やら内装やら、すべてに良い趣味が宿っている。今此処で厭かずに眺めている、光とシルヴィガラスの戯れによる拡散効果を活かした美しい明かり採りだってそう、これらはすべてアートだ!もうイダに住みたいぐらいにアランは何もかもを気に入っていた。自分とは年も近いようで、才能ある彼ともっと話してみたいと思う。実に興味深い人物である。
そして社長、レオンハルト。堂々とした体躯、威厳のある容貌、オペラ歌手のような深みのある心地良い声。おとぎ話に出てくる古き良き善良な王様そのもの、それでいて現場での労作業も厭わない気さくさ。社長に会うため現場へと向かう時にエルンストに聞いたところ、そんなことはしょっちゅうですよと言って笑っていた。手が足りないことも理由のひとつだが、とにかく勤勉なたちで、みなと一緒に働くことがなによりも好きなんですと誇らしげに父親のことを語っていた。会ってみてアランもすぐに社長の人好きのする、人肌を思わせる優しい温かなオーラにくるまれて、この人になら心から忠誠を捧げられると思った。イダの社員を心から羨ましく思ったものだ。
それからまた専務のゲーアハルト ―― エルンストのもう一人の叔父。作業着姿が新鮮だった。地元だからか、本社で見慣れていたスーツ姿のスタイリッシュな彼とは違い、少々ラフにくだけて、根の部分である軽い毒舌家でジョーク好き ―― という奥深い人間性のある一面を覗かせてくれた。有能で上品なビジネスマン紳士とだけのイメージであったが、今やアランの中では猫かぶりのとんだ曲者として、もともと彼に対して抱いていた好感株が爆上げとなった。ジョーク万歳だ!
しかし彼も取締役を嫌っていたとは ―― 本社でそんな素振りはかけらも見せたことはなかったのに ―― まあ当たり前の処世術なのだが、意外だった。会議においての真面目な取り組みぶりや、ゲーアハルトというファーストネーム ―― 島言葉風に読めば「ジェラルド」という同じ名前ということで、取締役の覚えも目出度くなにかと一目置かれ、珍しくも敬意を払われている彼なのに。 ―― それでも嫌う気持ちはよく分かる、あの人は極端な、結果だけを評価する仕事の鬼で遊び心がなく、しかもジョークも理解できない朴念仁ときているから ―― そう思い当たったアランは一人ウンウンとうなづいて納得した。
そして事務所の社員や現場の作業員 ―― 誰もが楽しげにみなと協調して業務に勤しんでいた。忙しそうではあったが、上司や部下、他部署といった隔たりなど関係なく助けあい、じゃれあって笑いあうゆとりを持っていた。そして気心の通い合ったお互いを思い遣り、一緒につましい幸せの日々を過ごしてゆく、まるで大家族のような社員たちのいきいきとした姿がこの企業の健全な精神を物語っていた。これがイダ・スティール・プロダクツ ―― アランが初めて知った小さな理想郷のような企業 ―― いや、世界だった。

いいなあ、大家族……僕のあこがれてやまないものだ ――
懐かしみのある光のいたづらを眼にしながら、今日あった愉快な出来事の印象を心の中のモノローグで振り返り、常に胸に抱えているひそかな望みをポツリと吐露して締めくくった。

ピッ。
そのとき、小さな電子音が聞こえてどこかの扉が開く音がし、どこか別の階段を誰かが事務所へ上がっていく物音がしてアランは現実に立ち返った。ここの他にも何箇所か入り口があるんだな……もしかしてエルンストだったのかな?と、見えるわけもないのに思わず二階を仰ぎ見る。さっきまでいた事務所のある場所。現場とはまた違った和やかで陽気な事務員たち。取締役からの電話で彼らとはそんなに長くは過ごせなかったけれど、とても楽しいひとときだった。さっさと電話を終わらせて僕も早く彼らのいる二階の事務所に帰ろう ―― 何気なくそう思いついた言葉だったが、次の瞬間、誰かに突き飛ばされて海の中へしたたかにダイブしてしまったような、大いなる衝撃がアランの全身を内から襲った。はたと目を見開き、さっき思いついた言葉を少々変えて、うわごとのように反芻する。

―― 帰る……イダの……事務所へ。
イダ……僕の、帰る……場所 ―― !!

それは天啓だった。

―― 帰る場所、運命の職場 ―― イダ・スティール・プロダクツ!
そうだ、素敵な旅が導いてくれたんだ!この約束の企業の地へ ―― ブラボー!!

奇しくも悟りの境地に至り真理を会得したアランはアドレナリンが分泌したのか、得も言われぬ幸福感に包まれ感慨無量の面持ちで天を仰ぐ。そしてひとまづ心を落ち着かせるために深く息を吸い、大きく吐きだしたあとに凄みのある不敵な笑みを浮かべ、スマートフォンをポケットから取り出すやいなや迷いなく取締役の番号へ折り返し発信した。接続音のあと呼び出し音をワンコール鳴らし、次のコールの途中で思い切りよく切断してやる。この人を食ったふざけた電話で、大人げない取締役はきっと感情的になってまたすぐに自分から掛けてくるだろう。それからはトコトン怒らせて、うまいこと解雇にまで持ち込ませれば占めたものだとアランはほくそ笑む。失敗したってなんのことはない、こちらからバルマーへ平和的に契約解除の意向を言い渡せば済む話だし、どちらにしたところでもう僕の腹は決まった。バルマーを去ってイダへこの身を捧げる ―― それはもう、揺るがない決意だった。

その前に最後の御奉公と洒落込んでから別れを飾るとしよう ―― 親愛なるウォルター取締役、あなたからのお電話、心からお待ち申し上げています ―― クスクスと笑いながら手に持ったスマートフォンの角にご機嫌な調子で軽くキスしたアランは、事務所を出たときとは真逆のウキウキした気分で画面の着信告知を鼻歌まじりに待った。

▶▶またどこかのお題へ続く予定です▶▶


11/9/2024, 10:36:39 AM

【脳裏】

coming soon !

11/8/2024, 11:10:29 AM

【意味がないこと】

coming soon !

11/7/2024, 10:21:28 AM

【鋭い眼差し】← change order 【あなたとわたし】

◀◀【仲間】からの続きです◀◀

⚠⚠ BL警告、BL警告。誤讀危機囘避ノタメ、各〻自己判斷ニテ下記本文すくろーるヲ願フ。以上、警告終ハリ。 ⚠⚠




















ようやく接続音が鳴った。着信拒否なんぞナメた真似してやがって ―― 出張先のオフィスの一室でジェラルドは、早く出ろと人指し指でトントンデスクを小突きながら電話先の相手の応答を根気よく待つ。しかし、かなり焦らされた挙げ句に突然接続を断ち切られ、無情な不通音がいたずらに彼の鼓膜を刺激するのみとなった。もう少しで四文字の下品な単語からはじまる罵詈雑言を吐きそうになったがどうにかこらえ、むなしい音を繰り返すスマートフォンの電話を深いため息とともに切断した。
―― コーヒーでも飲むか ―― 軽い疲労を覚えて眉間を揉んだあと長い前髪を掻き上げたジェラルドは座っていた豪勢なデスクの豪勢な皮張り椅子から立ち上がり、不愉快な気分を振り払おうと、あてがわれた個室を出てカフェスペースへと向かった。
定時を過ぎてもまだ大勢の社員が居残る大部屋オフィスを我が物顔で、堂々と闊歩して素通って行く。そんな不遜なるジェラルドを見た西のバルマー社員、特に女性陣は、端正な彼の容姿にしばし動きを止めて視線を釘付けにしていた。上背のある引き締まった体格、肩まで伸ばしたクセのないゴールデンブロンドの髪、そして灰色の冷たく射抜く鋭い眼差しの苦み走った面立ち ―― あまり彼を知らない人間は押しが利く精悍なイケメンの見た目に惚れぼれとするが、仕事上で浅くない付き合いのある人間は関わるのを避けて身を隠す。ジェラルド・ウォルター、北系の新大陸人で、旧大陸主要国に囲まれた国の西部にあたるこの西の支社へ、四年ほど前から訪れるようになった、バルマー・テクノロジーの重要役員である。新大陸からしばしば北の本国の本社へやって来ては旧大陸の東西南北と島の支社を廻り、そしてまた新大陸へと帰っていくというせわしない仕事ぶり。その中でこの西の支社は、西の本国の支社よりも規模が小さいというのに、回数的に北の本国の本社と並んで数多く彼が立ち寄る場所となっていた。新大陸人の彼が最初に旧大陸で拠点とした場所がここであり、なじみがあることも理由なのだろうが、きっと誰かお目当ての人物がいるからに違いない ―― そんな臆測の噂が社員のあいだでまことしやかに流れていた。しかしかなり以前からささやかれていたものの、いまだにそれとおぼしき女性 ―― もしくは男性の候補が絞り込めてはおらず、真相は不明のままである。肝心の当人はそんな噂のことなど関知することもなく ―― 母国語以外にはうとい彼であるから、西の言葉でなにを囀られ好奇の目を向けられようと意に介することなどなかった。

「 ―― まあ、ウォルター取締役。コーヒーをお召しですか?お声がけ下さればお部屋までお持ちしましたのに」
カフェスペースまで到ると総務の中堅キレイどころがすっ飛んで来た。以前から気のある素振りで馴れなれしく、少々うざったい女性社員であったが、島言葉に堪能でちょっとした世話も焼いてくれるから袖にはせずしたいようにさせた。私も休憩しようとしてたんです、と伝統的な奥ゆかしいアプローチ言葉を添えて淹れてくれたコーヒーを受け取ると、ジェラルドは数少ない知っている西の言葉で「メルシー」とだけ無愛想に感謝を伝えた。
「こちらこそ、私たちの言葉で返して頂いてうれしいです」そう言って健気な作り笑いを見せ、ジェラルドの傍にはべったまま当たりさわりのない話を向けてくる。ジェラルドは気のない相槌を打ちながら窓の外に広がる夜景を眺めていた。フォーマルなオフィス街の景観に人工的な色とりどりの光がまとい、夜の闇を幻惑の世界に変貌させる。
初めて出会ったのはこんな夜の街のカフェだった ―― 幻惑の光を眺めているうちに胸を締め付ける想い人との思い出が不意によみがえり、ジェラルドは束の間現実を離れて過去の美しい夢に思いを馳せた。

無造作にハーフアップでまとめたひよこ色の長めの髪とスレンダーなスタイルのせいで、ひと目見たときはギャルソン姿の女性だと思った。すぐに男性だと知らされたが、もうすでにその時には心を奪われ、その人物が何者だろうとどうでもよかった。仕事の合間を見つけて通いつめるうちに、やがて身を焦がすような狂おしい恋となって彼にのめり込み、大切な、何よりも愛しい存在となった。それなのに俺は彼を……

―― ヴェヴェ……何処にいるんだ……過ちは認める、だから俺にやり直すチャンスを与えてくれ ――

「あの……取締役……?」
まったく相手からの返事が無くなり、一人話し続けていた女性社員は訝しげにジェラルドへ呼び掛けた。それでもやはり反応はなく、そっぽを向いてぼんやりと夜景の方ばかりを眺めている。つられて自分も同じ窓の夜景へ目を転じると、窓のガラスに映って見えたジェラルドの表情に近寄りがたい痛々しさが垣間見え、それ以上声を掛けるのを諦めた女性社員は、お先に失礼しますと断ってカフェスペースから静かに去って行った。
俺もそろそろ戻るか……彼女が消えたあと、そう間を置かずジェラルドも、いまだ癒えぬ昔の傷を胸の奥へそっと沈ませて現実へと意識を戻し、飲み終えたコーヒーの紙コップを捨てて個室へ帰ろうとしたときにピスポケットの中でスマートフォンの電話着信音が鳴った。急いで取り出し画面を確かめると、あのいけ好かないジュノーからの着信である。すぐに出るつもりで応答ボタンをスワイプしようとしたが寸前で指を止めた。意趣返しだ、さっき散々待たされた上に切られた恨みを晴らすため、俺もやつ以上に焦らせてやろう ―― ふんと悪人面の笑みを浮かべて鳴り続けるコール音をしばらく聞き流す ―― はずであった。が、しかし。送信側の意図によってすぐに接続を断ち切られ、ジェラルドのスマートフォンは一回とその半分の長さのコール音しか鳴らされることはなく、瞬く間に沈黙の世界へと帰っていったのであった。呆気にとられ、手の中の静まり返ったスマートフォンをしばしポカンと見ていたジェラルドだったが、フツフツと込み上げてきた怒りにスマートフォンを握りしめ、荒々しい足取りでカフェスペースを後にした。

またからかいやがって、あの野郎!!ゴールドカラーだかなんだか知らんが、取締役様だぞ、俺は!!

たびかさなる数々の無礼についにブチ切れたジェラルドは凄まじい形相で猛然とオフィスを突き抜けて行く。事態を知る由もない西の社員たちは、怒髪天を衝く取締役が通り過ぎるのを目を丸めて見遣り、扉の音高く個室内へと消えて行くまでを、茫然自失のさまで傍観していた。

▶▶またどこかのお題へ続く予定です▶▶

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