スリルなんていらないと思ってた。ただ平和に過ごせればよかったから。
でも、あなたと出会って変わった。
とにかく危なっかしいあなた。でも、放っとけない。まるでスリル満点なジェットコースター。
今はただ、毎日が楽しい。
学力は学年1。スポーツも人並み以上に出来た。部活も誰よりも活躍することが出来た。
色んな人から見たら、私は自由に羽ばたいているように見えるかもしれない。
でも、違う。
学年1位を保つために友達と遊ぶことをなるべく避けて、やりたくもない習い事もやって、部活の練習も誰よりも早く来て……。
私の翼は、誰かに勝手につけられたもの。自分自身でつけたものではない。
無理やり外せば、血が流れて傷ができてしまう。
自由に飛べない翼なんて、いらない。
植物研究者の彼女に、一番好きな植物は何?と聞いてみた。
「うーん、ススキ」
意外な返答に、私はぶっきらぼうな返事をしてしまった。
「なんでススキなの?」
「なんでかぁ……なんだか、貴方みたいだから?」
馬鹿にしてる?と冗談交じりで言う。彼女は、ごめんごめんとふわふわ笑う。
「でもね、ホントだよ。出会った時からずっと思ってたの」
「だから、意味がわからないって」
「うーん、じゃあ今はススキっぽくないかも」
えぇ?と私は間抜けな声を出す。もっと詳しく聞きたかったが、彼女が別の話題について話し始めてしまった。
後でこっそり調べたら、ススキの花言葉は、
『心が通じ合う』
脳裏に刻まれた、あの人の泣き顔。
お兄ちゃんの人生をめちゃくちゃにしたあの顔。
でも、なんでだろう。
時折思い出すんだ。
意味が無いことなんてない、きっと。
だって、そういうことにしないと、私の人生の意味がなくなってしまうじゃない。
私がそう言ったら、彼女はこういった。
「人生なんかに意味を求めてどうすんの?」
そんなこと言う彼女の顔は……どんな顔だったっけ?