「手紙を開くと」
背景
親父、元気か?
この間はありがとう。
俺の選択は間違ってなかった。
あんたが言ってくれたことが嬉しかった。
よくやったって言ってくれたこと。
褒めてもらってなんだけど、
家族があれからボロボロなんだ。
俺にはもう支えられないほどに
ボロボロなんだ。
出ていったあいつは
最後まで文句を言っていた。
朝から晩まで働いてるあいつも
もう限界だ。
未来のあるあいつは
家族を思い就職しようとしている。
俺は俺を見たやつが
痛いやつって思うくらい
真っ暗になっている。
厨二病って思われるくらい
意識が深い所にある。
前が見えない。
何も聞こえない。
そんな時に
あんたが言ったよくやった
ほんとに嬉しかった。
敬具
「すれ違う瞳」
ごめんね君に興味無い
好かれたいなら努力しな
黙ってるだけじゃ分からない
酷い?
最低?
好きに言いなよ
興味が無いものは仕方ない
振り向かせたいならせめて会話
話しかけられれば話す
今はその程度だよ
発展するかは君次第
顔に自信ないなら
性格で振り向かせる
でも話さないと伝わらないよ
今の印象は最悪だよ
目も見れないほどにね
「風と」
凄く落ち着いている
凄く怒っている
それらが同時にある
心が壊れているらしい
自分では正常なのに
違和感はないらしい
至って普通なのか
医者は言った
あなたは感情のコントロールが出来すぎている
無意識のうちに自分自身に催眠をかけたのではないか
よく分からなかった
身に覚えが全くないからだ
医者は続けて言った
あなたは怒りを溜め込み
溜まっていることを認識できていない
落ち着いているのに
怒りを感じるのは
溜まった怒りが溢れそうなのに
それを意識できていないから
何か自分に強く言い聞かせたことがあったのでは無いか
心当たりはあった
多すぎるほどに
高校生の時に親父が死んだ
突然だった
睡眠時無呼吸症候群だった
親父は母親の横で
昏睡状態だった
あまりに長い時間
入院はしたが長くは持たなかった
それから2年ほど
母親の精神状態が悪く
ものすごくストレスだった
この時仕方ないことだと
怒りを抑えていた
母親が回復し始めたが
今度は兄がストレスを与えてきた
派遣会社に就職し
派遣先がなかなか決まらないからと言って
1年ほどで仕事を辞め
実家に帰ってきた
バイトはしない
仕事探さない
朝までゲームやギター
寝れなかった
うるさいと言っても聞かなかった
仕事探せと言っても探さなかった
バイトしたと思ったら夕方からなのに寝坊
しまいには入れて貰えなくなった
どうしようも無い兄にイライラしていた
この時は言い聞かせるなんてせず
ただただ我慢していた
食器洗い、洗濯、掃除
兄弟も母も誰もやらなかった
言い訳は時間が無いから
仕事疲れたから
通学のため朝五時に起き
夜10時に帰ってきて
洗濯、食器洗い、休日に掃除
誰もやらないからと我慢していた
この時イライラする気がしたが
何にも感じなかった
我慢に我慢を重ね
怒りという感情が感じなくなってしまった
感じはしないが怒ってはいる
それが今の現状
誰に言ってもわかって貰えない
そんな苦労をしたことも無いから
大したことないって思うやつもいた
世界でいちばん信頼し合えるはずの
家族への信頼が無くなった事が無いやつに
これを聞いた上で
お前が頑張らないとなんて言うやつもいた
兄に同情するやつ
母のために頑張れと言うやつ
弟を支えなと言うやつ
何も知らないクセに
分からないクセに
みんないいこと言ってるつもりなんだろうけど
誰1人俺の事を言ってくれない
頑張ってるんだねとも
無理するなよとも
何も言ってくれない
俺がしている事が当たり前かのように
何も言ってくれない
これを書いてる今も
怒りと冷静の間にある何かだ
胸が苦しいのに涙は出ない
面白いのに笑えない
確かに俺は心が壊れてるのかもしれない
俺は壊れる心があるんだろうけど
俺の周りには心がないやつしか居ない
そんな俺が怒りを感じずに落ち着くところがある
浜辺だ
海の音を聞くと嫌な言葉を忘れられる
海を見るとあいつらの顔を忘れられる
海の匂いは頭をスッキリさせてくれる
家に帰ると元に戻る
それでもいいから海へ行く
「夜が明けた。」
寝ても起きても、
目の前は真っ暗で
先なんて見えなかった。
感覚もない
耳も聞こえない
意識はあるのに
何も無かった。
そんな僕に君は
微笑みかけて
何度も話しかけてくれた。
君の優しさが僕を少しづつ変えてくれた。
僕は今まで何があったのかを話した。
高校で親父が亡くなったこと
それを機に家族が少しづつ壊れたこと
兄貴が仕事を辞め部屋に籠るようになった。
親父の死がショックだったからじゃない
ただ、自分に甘いだけ
誰も兄貴に触れなくなった
上がそんなだから
下が頑張る
バイトして学費を自分でだす
母親が一切の援助をしないでいいように
母親はすぐため息を吐く
暇さえあればため息
本当に聞きたくない
それが聞こえると
逃げるように部屋に戻った。
これを誰かに言っても
それはお前が頑張らないととか
お母さん支えてあげなよとか
何も知らないくせに
善人ぶるゴミみたいなコメントだけ残す。
君は黙って聞いてくれた。
話終わって怒りが少し落ち着いてきたら
僕は涙が止まらなかった
胸に詰まっていたものが一気に流れるように
沢山泣いた。
君も泣いてくれた。
泣いた君は僕を抱きしめて言ってくれた。
「家族のために頑張ったんだね。
これからは私もいる。」
欲しい言葉だった。
頑張らないとねっていう言葉は
自分は関わらないみたいに感じて
すごく傷ついていた。
だから
一緒に頑張ろうって言ってくれた事が
すごく嬉しかった。
今はまで横にいてくれた君が
何故か凄く輝いて見えた。
君がすきになった。
「ささやき」
話しかけてもらえると思ってるの?
なんで自分から話しかけないの?
どうして俺が冷たい人になるの?
興味ない人に話しかけないでしょ?
君は
返事は一言
リアクションで終わらせる会話
そんな人と話したいと思うかな?