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11/24/2023, 11:57:51 AM

外は寒い。その分、こたつが温かい。
こんな日は1日中家の中にこもっていたいけれど今日はそうはいかなかった。
そういえば彼と初めてであった日も、今日と同じような状況だった気がする。
一年前の冬…
「美憂。そろそろ家でないと、塾に遅れるわよ。」
お母さんの大きな声がキッチンから聞こえてきた。
今日寒いし、塾休めないかな。
そんなことを思っていると、お母さんがキッチンから出てきた。
「ちょっと、はやくしてちょうだい。お母さんだって暇じゃないんだから。」
お母さんはいつもにましてイライラしていた。
おそらく、原因は離婚した父親が会いに来るからだ。
離婚してしばらくたつのに、お父さんは未だにお母さんのことを引きずっている。
今日塾を休みたいと言っても、余計に機嫌を悪くするだけだろう。
「今行くから。」
私は仕方なく、塾へ行く準備を始めた。
塾につき、私は車から降りた。
「じゃあね」
お母さんの車を見送ったあと、目の前にそびえ立つ大きなビルを見上げた。
このビルのニ階に、私の通っている塾がある。
受験を受けなくちゃ入れないような、名門塾だ。
でもどうしても今日は行く気が出なかった。
サボったらバレてしまう。
塾をやめさせられて、お母さんに打たれてしまう。
だめだとわかっているのに、私の足はどんどんビルから遠ざかっていく。
たどり着いた先にあったのさ、小さな公園だった。
そこにある遊具はブランコだけで、あとは木のベンチがぽつんとあるだけだった。
寒いから屋内に入りたいはずなのに私は吸い込まれるように公園内に入っていった。
よく見ると、ブランコには同い年くらいの男の子が座っていた。
彼も私に気づいたみたいで、「あっ」と小さな声を上げた。
何となく彼のことが気になって私は男の子へ近づいていく。
「隣、いい?」
ブランコを指さして、私が尋ねると、男の子はコクリと頷いた。
しばらく二人でブランコをこいでいたとき、私はあることに気がついた。
「それ、うちの塾のスクールバックじゃ…。」
彼はびっくりした表情で私を見つめた。
「きみ、星羅塾に通ってるの?」
「うん、そうだけど。」
「僕、今日からこの塾に通う予定だったんだけど、サボっちゃって。」
「入学初日からサボったの!?」