竜胆

Open App
10/30/2025, 11:39:57 AM

そして、ウィズは下を向くのを辞めた。

斜向かいに座った、
人形じみた美貌の魔女を直視する。

真っ赤に燃え盛るようなその双眸を目にしながらも、
まっすぐその目を射抜いた。

さあ、
今までクラスメイト達だったものを背にして、
全員で生き残るための最初の1歩を。

「ねえ、貴女、」

10/30/2025, 9:10:37 AM

tiny loveってお店知ってる?

最近西口にできたんだって。

宝石の専門店で、
イギリス人の宝石商が
本物の宝石だけを取り扱ってるらしいよ。

宝石商なんて今どき居るんだね。

いつか恋人と行ってみなよ。

いいものが見つかるかもしれないよ。

7/12/2025, 5:49:39 PM

涼やかな音色が縁側から聞こえてきた。
目が眩むような明るさから逃れ、
暑い季節を体感する。
山の向こうで海のような青とコントラストを描くように、白い大きな綿菓子が浮かんでいた。
僅かな眠気と重力に従って、
背中を畳にくっつけて寝返りを打つ。
そこには深く息を立てる君がいる。
胸の上下がいつもより長くてはっきりしている。
僕も真似をしていつもより大きく息を吸う。
途端にいぐさの匂いが鼻腔をくすぐる。
少しずつ呼吸を緩めると、
身体中が僕の支配下から逃げ出し始める。
指の先が言うことを効かなくなるのを感じながら、
断片的に君のことを考えた。
それでも少しづつ意識は薄れていく。
どんどんまぶたが重くなり、
最後に君の顔がぼやけて消えた。

6/9/2025, 1:47:56 PM

どうしてこの世界は、こんなにも美しいのだろう。


夜明け前の薄暗く照らされた君の寝顔、

潮の香りを浴びながら船旅を喜ぶ君の笑顔、

映画館でスクリーン照らされて濡れていた君の横顔。


どれも言葉にならないほど美しかった。
別に君が美人だからではない。
君を愛しているから、

3/4/2025, 6:25:04 PM

「約束なんて今まで守った事ないだろ」
「今回は必ず返すから。約束するって!!」
「本当だな?じゃあ必ず返せよ」
「ありがとう!お兄ちゃん」

__このやり取りは先月のもの。
お金を借りては踏み倒す義理の妹のせいで、
電話を録音する癖がついた。

先月の初めに妹から、金の無心をする連絡があった。
ちょうど会社から臨時ボーナスが出たので、
いつもなら5回ほど連絡があるまで貸さないが、
(妹が本当に必要な時にしか貸したくない為だ)
あの電話のやり取りで、
あっさりボーナスから10万円を貸した。

この行為が全ての問題の始まりだと気付いたのは、
昨日の夜中である。

例えば貸したお金が帰ってこないだけなら、
初めての事でも無いので諦めがついた。
しかし、金を返さない妹のアパートの大家から
夜中に電話が来たことには流石に驚いた。

電話の内容は、
妹が俺を保証人にしていて、
5日前に家賃を踏み倒して逃げたから、
俺が代わりに払ってくれと言う内容だった。
保証人としては、
俺の承諾もサインもないため無効だが、
どうも問題はそれだけでは無いらしい。
大家の話によると妹とその彼氏には息子がいて、
その息子が7日ほど家から出てきてないそうだ。
息子が生きているか心配なので
確認して欲しいと連絡をくれたのだ。
その子供の年齢はなんと7歳程度。
学校には通って無いそうだ。
まだ若い妹に子供は居ないはずなので、
彼氏の連れ子だろうと当たりをつけた。









Next