お祭囃子が遠くに聞こえる。
開け放った大窓から、賑やかな人の声。
神様が舞い降りてきて、こう言った。
「あなた、不運ですねぇ〜笑」
「…は?」
私は生前、どうやら不運だったらしい。
確かに孤児院に売られてから幾数年、
いつの間にか実験体にスパイに男娼までこなし。
この世の底辺を全て見てきた。
しかし、地獄の底で
たくさんの家族ができた。
この世で一番幸せな瞬間だった。
まぁ、殺されてしまったが。
私一人になり、何十年。
老衰で私は死んだ。
ようやく人生が終わると喜んだのもつかの間、
転生の順番待ちをしていたら、
神様が降ってきた。
失礼な文言とともに。
そしてやってしまった、
神への対応とは思えない、
絶対零度の返事。
私のことを見て、
やだなぁ怒んないでくださいよ、
ちゃんと次は幸福をお届けしますんで、と、
神は続けた。
「なんてったって、あなたご家族が居たでしょう?
彼らから伝言がありまして。
「生まれ変わったら、僕たちを探してね!」
だそうです。」
「????」
「だーかーらー、
あなたのご家族の来世を人間、
全員同じ世界線にしてあげてたんです。」
「…それって、もしかして」
「そうです!あなたはご家族にまた会えるのです!」
もしもタイムマシンがあったなら、
いつに戻るだろう。
何故か未来に行くという選択肢が思いつかない。
過去に未練があるからだろうか。
それとも後悔?
後悔なら沢山してきた。
戻りたい瞬間も数多くある。
でもきっと。
私はタイムマシンを使わないだろう。
この後悔を抱いたまま。
手を取りあって、
僕たちは脱走した。
第二次世界大戦の真っ只中、
子供の人権なんて無いに等しかった。
大人の人権だって、
国に都合がいいように消し飛ぶ時代だ。
そうなれば子供のことを
守ってくれる人は居なくなる。
大量の孤児が生まれた。
両親が戦争で死んだ子、
派閥争いで家族が消された子、
戦争によって倫理の底が抜かれた後
実験のために買われる子、
孤児院に流れ着いた子。
様々な孤児が
孤児院に集まった。
どうすればよかったのだろう、
これまでずっと歩いてきた。
後ろを振り返らずに。
この5時間ぐらい。
歩き続けるのは、
後ろに私を追う何かがいるからである。
何かは分からない。
なんなら今どこを歩いているのかも分からない。
夜中にトイレを出たら、この道が続いていた。
そして振り返るとトイレは消えていた。なんで。
ズルズル何かを引きずる音がする。
具体的に言うと、
麻袋に入れた湿っぽい塊が引きずられている。
そして後ろにいるやつはそれを気にもしていない。
1度も止まらないからだ。
ホラー耐性0の私には非常に辛い状況。
しかし、各種武術で鍛えられたメンタルは
悲鳴をあげることも許さなかった。
ビビったことがバレると、
師匠達にドヤされるに違いない。
そして更なる訓練を課されるに違いない。
それは本当に嫌だ。