手を取りあって、
僕たちは脱走した。
第二次世界大戦の真っ只中、
子供の人権なんて無いに等しかった。
大人の人権だって、
国に都合がいいように消し飛ぶ時代だ。
そうなれば子供のことを
守ってくれる人は居なくなる。
大量の孤児が生まれた。
両親が戦争で死んだ子、
派閥争いで家族が消された子、
戦争によって倫理の底が抜かれた後
実験のために買われる子、
孤児院に流れ着いた子。
様々な孤児が
孤児院に集まった。
どうすればよかったのだろう、
これまでずっと歩いてきた。
後ろを振り返らずに。
この5時間ぐらい。
歩き続けるのは、
後ろに私を追う何かがいるからである。
何かは分からない。
なんなら今どこを歩いているのかも分からない。
夜中にトイレを出たら、この道が続いていた。
そして振り返るとトイレは消えていた。なんで。
ズルズル何かを引きずる音がする。
具体的に言うと、
麻袋に入れた湿っぽい塊が引きずられている。
そして後ろにいるやつはそれを気にもしていない。
1度も止まらないからだ。
ホラー耐性0の私には非常に辛い状況。
しかし、各種武術で鍛えられたメンタルは
悲鳴をあげることも許さなかった。
ビビったことがバレると、
師匠達にドヤされるに違いない。
そして更なる訓練を課されるに違いない。
それは本当に嫌だ。
1件のLINEが人生を変えた。
そんな経験はありますか?
目が覚めると、そこは異世界でした。
夢では無いのか?と、
そう思われるでしょう。
私も思いました。
しかし、一向に覚めないのです。
一緒に来た女子高生が、聖女として連れていかれ。
私はおまけとして、
一般教養を教えていただいています。
ここまで来ても、覚めない夢は、きっとありません。
勝手に魔法陣で召喚しておきながら、
ほんの少しの一般教養が身につけば、
無一文で放り出されることが決まり。
この恨み、どうやって晴らしてくれよう。
などと考えた瞬間もありましたが、
よく考えると、
元の世界でも、
天涯孤独の身、職場も無くなったばかりでした。
悲しい。
やはりツイていないのでしょうね。
仕方ありません。
私の当たり前。
ご飯があること。
お風呂に入れること。
勉強する時間があること。
図書館に行けること。
色んなことがある。
これらが当たり前でないことを、
私は誰よりも知っている。
____でもなぁ。