SAKU

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6/27/2024, 12:48:50 PM

自分のことを誰も覚えていないと良い。
変わらぬ乾いた土は、熱すら逃しそうにそっけない。
誰より自由であることは誰の記憶にも残らないことと同義だった。この地を去ってから60年は経ったか、もう少しか。
日差しも強く、人間に何も優しくないこの土地で、それでも歪んだ視界には住居と人の影がある。
思い出だけを縁に生きている。
辛くはないがたまにひどく寂しい。それすら、自身の幸運を自覚する要素にしか他ならないけれど。
あの人の影だけずっと追いかけている。終わらない影踏みのような旅だ。
満たされていたから生きていける。満たされていたから今が空虚で、これから私はどこに行くんだろうかと。
誰もわからない、自分以外誰も見届ける者のいない道行は、爛々と輝く太陽に照り付けられている。