終わりにしよう
「ね、別れよ」
ポツリと
テレビを見ながら、まるで独り言のように
「じぶんさ、結構、考えたんだよ」
もうすぐ終わりの近いバラエティ番組を聞きながら
隣りに座った其の人を盗み見る
「急、でもないんだよ」
じっと、まだ若い芸人が弄られている様を観ながら
「やっぱ、間違い、だったと思う、から」
声だけ聴けば、泣きそうで、可哀想だと思うぐらいに
声が震えている。
「別れよう、ほんの少し、時間が必要だ」
其の人の顔は有り得ない程に無表情で凍てついてて
感情なんて母親のお腹に忘れてきたかの様だった
「ね、もう、終わろう。」
こちらを、振り向く。
「終わりにしよう」
目が覚めると
途端に真白な刺激が眼ん中に突き刺さった
頭はズキンズキンと鳴っている
ツンとした病院の消毒の臭い
周囲からくぐもった話し声が聴こえてくる
そこで俺は耳に包帯が有るのに気付いた
其処だけじゃなく身体中
ぐるぐるぐると巻かれている
何があったのか
未だ真白な刺激が遺る眼で
どうにか話している奴共を一目見ようと
肘から先が失くなった腕で
身体を起こした
街の灯り
所々洋装をした人々が行き交う
街灯に降り積もる雪は
ほんのりと灯を反射する
客寄せの声が飛び交う祭の夜
広場では神輿を担ぐ屈強な男共
星の様な雑沓に身を置いて
街の灯と喧騒を楽しむ
友達の思い出
毎日挨拶して
毎日一緒にお昼を食べて
毎日欠かさず通話して
偶に部活の愚痴を言って
ずっと続くと思っていた日常
一言
たった一言
君の一言
僕からの返事を待っている君の瞳は
熱を帯びて
違う僕を見ていた
友達だった僕の思い出
いつまでも
靴で踏んだガムみたいにくっついて
なかなか離れてくれない
神様だけが知っている
縁だとか運だとか
そんな“偶然”という便利な詞で
括られる人生
ただ捻くれているだけかもしれないけど
今この景色に巡り合ったのは
ホントはただ“必然”だったから
なんて思っちゃう