欲望には恥じらいが必要であると思う。
「欲望をさらけ出す」という煽り文があるけどらさらけ出したあと、はたしてあなたは責任をとれるのか?
食べ放題で食べ散らかしたあと、体重計にのってショックは受けないか?
どこにも行かず、何もせず、ただ寝て過ごした休日に未練はないか?
万札握りしめて満たした性的欲求に虚しさはないか?
満たせる欲望の大きさと満たしたあとに起こる後悔の大きさは釣り合うくらいがちょうどいい。
この釣り合いをとってくれるのが、恥じらいという奥ゆかしい感情であると思う。
列車に乗るのは好きだ。
節約が好きなので、小旅行では新幹線や特急は使わず、鈍行列車をよく用いる。
時間は倍かかるが、それは早起きの口実になる。帰りは遅くなっても構わない。24時間営業の駅前のマクドナルドに立ち寄り、ポテナゲセットを食べる瞬間は疲労がふっ飛ぶようで気分がいいし、しょっぱいものがとてもおいしく感じる。
こんな旅は今の年齢のうちにしかできないだろう。なら、いま楽しんでおくのがいいにちがいない。
遠くの街まで行きたいときは、だいたいストレスマッハのとき。
でも、いきなり遠くまでは行けないから、近くのカフェで息抜きしてる。
電車の窓越しに東伊豆の海岸線を眺めながら、いつの間にか寝落ちた帰り道。
私にとって、あの一瞬の眠りが幸福な現実逃避だった。
君は今、万引きをしようとしたね?
万引きでは言い方が軽いね。窃盗だ。君は盗みを働こうとした。
蚊を一匹殺したことはあるかな?あるんだね。それなら殺生と盗みの罪で死後は黒縄地獄行きだ。
黒縄地獄はね、熱した縄で簀巻きにされたあと、その縄目にそってこれまた熱した斧で切り刻まれるんだ。火の山に登らされたり、大釜で煮られたりもするよ。
震えているね。怖いね
怖いのにどうして盗みを働いたの?え?澁澤龍彦の快楽主義の哲学に影響されて?
一時の快楽こそ、恒久的幸福より求むるべきものである――あれは悪書だからね。燃やしてしまいなさい。あんなのに従っていたら、そのうち額から角が生えてしまうよ。悪魔になるよ。
君の魂はそれができるほど、純粋ではないんだ。分かったら、大人しくお家に帰りなさい。今日のことは忘れて、奴隷のように生きなさい。それが君にできる唯一の生存戦略だ。