12/23/2024, 12:23:09 PM
「メリークリスマス。」
俺がその声に顔を上げると、俺の隣に、彼女がプレゼントを持って立っていた。
「…え?」
「クリスマス。もうすぐでしょ。当日は仕事って言ってたから。」
「…いや、そうだけど。」
俺はパソコンから手を離して、彼女の差し出すプレゼントを受け取った。
「何か恨み言あるなら言えよ。」
プレゼントをしばらく見つめたあと、俺がぽつりとそう言うと、彼女はその言葉を笑い飛ばした。
「嫌だなぁ。私をなんだと思ってるのよ。和くんは、私にとって、ずっと大好きな和くんだったよ。」
彼女はそう言って、優しく微笑んだ。俺は自分の声が震えるのが分かった。
「でも、でも俺…。」
俺の言葉を制するように、彼女は俺の頭をはたいた。
「いつまで引き摺ってるのよ。もういいんだよ。和くん。怒ってないよ、私。」
俺は咄嗟に彼女に手を伸ばした。でも、掴めたのは空気で、気がつけば彼女は居なくなっていた。
「…ごめん。」
彼女が死んでからおよそ2年。彼女は俺の目の前でトラックにはねられた。俺が、俺がもっと気をつけていたら。2年間ずっと自責の念に駆られていた。その中での、彼女との再会だった。彼女は、ずっと変わっていなかった。あの頃から、ずっと。
「…。」
プレゼントのリボンをほどいて開けてみる。すると、水色の箱が入っていた。
「俺の好きな色だ。」
フタを開けると、もう年季が入ってくたくたになった手袋が入っていた。
「おれが、あげたやつだ。」
視界がぼやけた。淡いピンク色の手袋が、白く滲む。目の前の雫が弾けたあと、手袋の横にメッセージカードがあるのを見つけた。涙を拭ってそれを手に取る。
『ありがとう。 志織』
当分、忘れられない日になりそうだった。
【完】