『苦しい?』
....全く
『悲しい?』
....全然
『楽しい?』
....何が
『寂しい?』
....何それ
『怒ってる?』
....別に
『感情有る?』
....無いよ
僕は人間として不完全。
人間の形をしているが人間じゃ無い。
感情の無い失敗作。
# 110
通るたびに香る匂い。
君が通った場所には君の匂いが微かに残る。
だからね、何処にいても見つけられるんだ。
# 109
私たちの間に言葉はいらない。
ただ、一緒にいるだけで満足ができる。
でも、なかなか相手は私を見てくれない。
迚も手強い相手だ。
# 108
桜が綺麗に咲いている春。
そんな、何の変哲も無い日々だった........と言えたらなと何度思ったことやら。
現在僕の齢は十八。
一般的な高校3年生と言いたいところだがちょっと.....いや、だいぶ違う。
殺し屋として働くことになってしまった。
事の始まりは、今のように桜が綺麗に咲いていた三年前だった。
入学式が終わり家に帰っていると、誰かにつけられている感じがした。
猛ダッシュで家に帰った。
親はいないため一人暮らしをしていた僕にとってこういう時は恐怖に襲われるが其れとは裏腹に少しの好奇心もあった。
ドアをまた開けようとするとインターホンが鳴った。
最初は開けるのに躊躇ったが鳴り止まない為、仕方無く開けた。
背の高い人だった。
髪は深い青色、目は空色、けど服は黒色だった。
「誰ですか?」
「こんにちは。私は早蕨隼翔と申します。突然の訪問で申し訳ありません」
見た目に反して根は良い人そうな人だった。
「あぁ、構いませんよ。此処ではなんですから、中へ」
「では、失礼します」
早蕨さんを中のリビングへ連れていき椅子に座らせた。
僕はお茶を入れるために台所へ行った。
お茶を入れ、早蕨さんの元へと戻った。
「すみません、家に何もなくてお茶しか出せなくて」
「云え、構いませんよ」
笑って答えてくれたので、内心、安心した。
「君は、迚も礼儀正しいですね。誰かに教えてもらったんですか?」
「亡き祖母に、客人には礼儀正しく接しなさいと昔言われまして」
「良いお祖母さんでしたんですね」
「はい....そう云えば、僕に何か用でも有りましたか?」
「あぁ、すみません。そろそろ本題に入らせて頂きますね。話に追いつけるように頑張って下さい」
其れから、早蕨さんに色んな話を聞いた。
両親は優秀な殺し屋で本当は交通事故ではなく任務の際に死んでしまった事。早蕨さんも殺し屋だって事。兄や姉も裏で殺し屋として活動している事。
✾
「其れで?僕にも殺し屋になれと?」
「仰る通りです。嫌ならば強要は致しません」
「もし、なったら両親の仇も打てますか?」
この兄弟は揃って似た者同士だな。
皆、同じことを聞いてなっている。面白い。
「嗚呼、保証はできるとは限らない。ですが、ならないならば、今此処で殺させて頂きます」
「選択肢は無い!なるに決まってるだろ!やっと仇討ちができるんだ」
「では、行きましょう」
✾
そんなこんなで僕は今殺し屋になった。
あの、突然訪問してきた人によって、ね。
# 107
雨の中佇んでいたらビチャビチャになった。
✾
学校が終わった時に急に雨が降り始めた。
折畳み傘を常備していた僕はリュックから傘を取り出し一人で帰っていた。
雨の音を聞きながら時々すれ違う近所の人に挨拶をしていた。
暫く歩いていると誰からか電話が鳴った。
確認するとみっつ下の妹からだった。
いつも通り、なにかの頼み事だろうと思い切ろうとしたが何故か今日はそんな気がしなかった。
頭の中で嫌な予感が走り、直ぐ様電話に出た。
「どうした?」
電話の向こうで妹が泣く声が微かに聞こえた。
「落ち着いて?何があったか話して」
「おか...さんが、事故....にあって...意識不明の重体で」
その瞬間手から傘が滑り落ちた。
「そう...か、直ぐ行く待ってろ」
「うん」
妹との会話が終わると電話を切った。
其の場にしゃがみこんだ。
雨とともに自分の頬からは涙が溢れ出ていた。
抑えようと何度も、何度も、自分の涙を拭き続けた。
けれど、涙が止まることはなかった。
# 106