風が強い。
いままで感じたことのない強風が、私に向かってくる。私が1歩踏み出すたび、それは強くなるようだ。
ああ、髪がめちゃくちゃになる…
なんでこんな目に…
また1歩踏み出す。
その瞬間、視界が赤に変わった。
一瞬だけ…それは紅葉の葉だ。
(…もう秋か…)
私が秋を感じるのは、このときだ。
葉が色づいて、街に彩りができるとき。
秋にはそれくらいしか特徴がない気がする。
芸術の秋、スポーツの秋…とか言ってるけどそんなの他の季節にも通用する。
そしたらまた何か飛んできた。銀杏だ。
この街に銀杏なんてあっただろうか。
それにしても本当に風が強い…
私は走り出した。
角を曲がる。
(…?)
向かい風。曲がったのに。
風が私にあわせているよう。
視界が真っ赤になる。
今回は一瞬じゃない。
黄色、緑、赤…
大量の落ち葉が私に襲いかかってくる。
「…ああ…」
声が出てしまった。
誰かのイタズラ?
風も私を押してくる。
まるで戻れ、と言うように…
…戻る?
「あ…」
私はすぐに踵を返した。
⸺学校。
なんの特徴もない、私の学校。
弁当を持って帰るのを忘れていた。
教室の扉を開ける。机の上に、弁当箱が…
…空いている。
食べ残しはしていない。
すぐに駆け寄る。中には…
栗。どんぐり。木の実。落ち葉…コオロギ。
「ぎゃあっ」
なんで…?
私は秋に呪われているのかもしれない。
また風が吹いた。今度は穏やかだ。
振り返ると窓が開いていた。何かがいる。
「…モズだ」
スズメより一回り大きいくらいの鳥。
…が10羽くらい止まってる。
1羽は銀杏をくわえてる。
そういえば…このまえ落ちていた巣を木の上に戻してあげた。卵が割れていなくて安心していた。
恩返しとやらだろうか。モズの恩返し。
モズたちは飛んでいった。秋の色とりどりな弁当箱を残して…
私はこれをどうすればいいのだ…
そして風さえも操るモズは何者なのだ…