12/3/2024, 1:59:33 PM
「明日、何時に出るの?」
部屋で明日の支度をしているとお母さんが聞いてきた。佳奈は明日、東京に上京する。今日が最後の実家で過ごす日で、家族と過ごす日だった。
「7時だけど」
佳奈は急に話しかけられた驚きでボソボソ答えた。
そう、と言いお母さんはキッチンに戻っていった。
お母さんとは半年ぐらい口をきいてないかった。原因は元彼だった。佳奈にとっての初めての彼氏は金髪でいかにも指輪やピアスをつけてるチャラチャラした男だった。たしかに基本ヤンチャなことばかりしていたが佳奈といる時は紳士ぐらいに優しかった。
初めて彼氏を家に連れてきた時、お母さんは怪訝そうにな顔をしていた。案の定その夜、お母さんに問い出された。
「あの子はやめとき、今すぐ別れなさい」
お母さんは心配そうな顔で見てきた。
「お母さんに言われる筋合いない」
「ろくなこと起きないわよ」
「うるさい」
それから一か月後、その彼氏と連絡がつかなくなった。貸した20万を持っていったまま。ただの遊びだった、お母さんのいう通りだった。佳奈は部屋の片隅で膝を抱えて叫んだズボンは少し濡れていた。
なぜかお母さんは彼氏のことは聞いてこなかった。それ以来お母さんとは話せていない。
「財布は持ったか?あとは何だ、タオルもっといらないか…」
ぐだぐだお父さんが廊下であたふたしている。
「もう大丈夫だから、心配しないで。じゃあ行くね」
キャリーケースを持って玄関のドアを開けようとすると後ろからお母さんが歩いてきた。
「さようなら…じゃないわね、行ってらっしゃい」
「うん、行ってきます」
お母さんの目はどこか寂しげに見えた。