彼はいつも暖かい笑顔を浮かべてる人だった。
誰にでも笑顔で分け隔てなく接している。
彼のいる場は穏やかで、彼はその笑顔でいろんな人と和やかな関係を築いていた。私も例外ではなく、彼の笑顔にいつも癒されていた。
そんな彼と少し仲良くなって、よく喋るようになった。彼は思っていたよりおしゃべりで、時々毒っ気のある言葉も吐くが、私が見る限りいつも明るい感情でいた。
そんな彼が、私の前で怒って、涙を浮かべた。
次に会った時彼はその時のことを気に病んではにかんで笑って、謝ってきた。
しかし、私は彼が暗い感情を見せてくれたことが、誰にも心の奥底を見せない彼が、その誰も知らない彼の一端を見せてくれるほど気を許してくれたような気がして、彼には悪いが無意識に口角が上がってしまうほど嬉しかった。
どこにも書けないことってなんだろう。
普段我慢してた悪口?
君への本当の気持ち?
ちょっと恥ずかしい性癖?
なんにしたって書いてしまったら、どこにも書けないなんてウソになってしまうね。
それでも書いてしまうのは、人間が矛盾に溢れた不思議な生き物だから。
ずっとそれぞれのペースで時を刻んでいる。
好きな速さで回っているけど、時々ピッタリ重なり合う。
だからと言って何が起こるわけでもなく、すぐにまた、離れて近づいてを繰り返す。
そんな時計の針みたいな君との関係性が、心地よくて、とても気に入っている。
悲しいとき、苦しいとき、辛いとき。
悔しいとき、嬉しいとき、幸せなとき。
面白いとき、なにかに心打たれたとき、特に意味もないとき。
どんな気持ちでも、涙は意外と出るものだ。
涙はそんな溢れて止まらないたくさんの気持ちの、透明で、キラキラした、少ししょっぱい結晶なのかもしれない。
初めてキスした日の夜、軽く触れるだけのそれだったけど、何回もその時を思い出して、ドキドキして、時々ベッドの中で足をバタバタさせて、全然眠れなかった。
君も同じだったら、そんなに嬉しいことはない。