誰もいない教室
高校に入学したけれど
通学できなかった甥っ子。
退学することを決めて
その手続きをするため
高校へ出向いた。
応接室で話をした後に
最後にと教室を覗きに行く。
どんな想いでそこに居たのか。
しばらくすると、「誰もいなかった」
と言って戻って来た。
後になって、「あの時、頑張って
学校行けばよかった」と言った。
あの時はどうしても行けなかった
んだよ。ただ、今はそう思えて
学校がキライな場所になってなくて
良かったと、改めて思った。
誰もいない教室で、
ちゃんとサヨナラしてこれたんだね。
信号
10年務めた会社を退職してすぐ
妊娠していることがわかった。
切迫早産で早々から安静となり
ベッドで横になって過ごした。
娘が5歳の時、入院した。
激務だった仕事を辞めて
ちょうど職探し中だった私は
娘のそばにずっと居れた。
娘が高校生の時、体調をくずした。
事務仕事からシフト制の現場仕事に
転職していたので、娘の体調に
合わせてサポートできた。
予知信号をキャッチできたのか
存分に娘中心の生活を送れた。
形も音も光もない信号は
私を自然に誘導してくれた。
言い出せなかった。でも……
ピンク色のランドセルが似合うよ。
キャプテンは貴方には荷が重いよ。
あっちの高校の方がいいんじゃない。
テニス部の方が気楽そうじゃない。
私は言い出せなかった。
だから貴方は悩み、自分で決めた。
だから、言わないで良かった。
secret love
この想いを穴に埋めたら
枯れ葉が覆いかぶさって
隠してくれた。
時が経ち、忘れたころに
新しい芽を出した。
ページをめくる
君が生まれる前に、9冊まとめて
購入したアルバムがある。
1ページ目はエコー写真。
クリオネのような君が写っている。
ページをめくる毎に成長する君。
君の10年はあっという間だと
全てを噛みしめて過ごした。
10歳も駆け足で過ぎて行き
成人式の準備をし出した今。
ページをめくり続け、アルバムも
8冊目に突入した。
君が大切な人を見つけて
自分でページをめくり出したら
このアルバムを持たせよう。
そんなことを思い願って
9冊目の未来のアルバムをとじた。