#理想のあなた
大学生の私
12時の鐘が僕を殴り付けるように響いた
さぁ、お家に帰ろうか
そう思って辺りを見回しても
一緒に来たはずの彼女がいない
何処へ行ってしまったのだろうか
そういえば…僕は何をしているのだろか…
そして…此処はどこなのか…
分からない
無意識に耳を塞いでいた
知りたくもない
聞きたくもない
見たくもない
もうやめてくれと
心と体が酷く拒絶している
腕に何かが張り付いたような感覚
なんだ…白い蝶…?
これは…モンシロチョウ…?
何かを訴えかけるような
目で蝶は僕の傍を離れない
"運命を受け入れて"
頭の中にそんなメッセージが浮かぶ
これは蝶からなのか
それとも僕の潜在意識に
存在するものなのか
目を開けたらそこに
瞬きさえしない彼女の笑顔が
張り付いていた
そして時刻は12:01を指していた
忘れられない、いつまでも。
心臓は温かい
「私はここにいる」と
主張しているかのように
音を立てて生命を繋ぎゆく
私はあなたの心臓に
触れたかったのかもしれない
あなたは知らない
あなたが私の心臓に触れてしまったことを
優しく触れた手を私は
愛してしまったのかもしれない
もう触れることのないその手を
愛おしく抱きしめて
そのまま眠ってしまいたい
記憶の中のあなたと2人
私は忘れられない、いつまでも。
私はあの雲が憎たらしい
私は大空をながれる
あの綺麗な雲にはなれない
人として地を踏み
その足で人として
生きるしかなかった
生きたくなくても生きた
死にたくても生きた
誰もいなくても1人
空っぽなまま生きた
私にこの空を飛ぶことは出来ない
触れることすらままならない
あの空に自由に触れられる雲
あなたは私に出来ないことを
容易く叶えてしまうのね
私にはなんにもない
あなたが羨ましい
今日も胸の奥が痛い
日を重ねるごとに
記憶の中のあなたは透明になりゆく
不幸のどん底にいる
私の心の横にちょこんと座り込んで
あなたは立ち上がらない
そ ん な 不 確 か な 記 憶
"ありがとう"すら
伝えられないまま
あなたは日々透明になってゆく
ごめんね
ありがとう
この言葉だけは不透明でいて