その化け物に殺されると、最期に言った言葉と声を模倣されて、他の人間を誘う囮にされてしまうらしい。
「愛してます。あなたを愛してます。」
だからその声が聞こえてきた時、あぁ、僕の想い人は化け物に殺されてしまったのだと分かった。
それでも、僕は、彼女ではないとわかっていたのに……その化け物の所へ、近寄ったのだ。
僕と彼女は、1年前に恋人になった。
最初の頃は確かにラブラブで、熱烈な関係だったと言えるだろう。けれど、そんな関係は数ヵ月後に終焉を迎えた。
彼女は僕に興味を無くしてしまっていた。どんなに愛してるの言葉をかけても、彼女の目はスマホから動かない。プレゼントを買ってきても、数日後にはフリマサイトに上がっていたりもした。
極めつけに、彼女は僕と付き合って退会したマッチングアプリを再開していた。
けれど僕は……別れようの5文字が声に出せなかった。未練たらしいが、それでもまだ、今でも彼女のことが好きで仕方ない。だから、彼女の口から別れようと告げられるまで、僕は彼女の愚行を見ないふりし続けようとしたのだ。それが、2週間前からの出来事だ。
そして今。彼女は、化け物に殺されてしまったらしい。
多方、マッチングアプリで繋がった相手に会いに行っていたんだと思う。そしてそこで愛の言葉を囁いている時に、悲劇が起きたのだろう。
「あいしてます。あなたをあいしてます。」
これが化け物の囮だとしても、僕は。数ヶ月聞いてなかった、あなたの言葉が嬉しかった。
その言葉を聞く為に、あなたに僕も愛してますと伝えるために。僕の体は無意識に、化け物の傍に駆け寄って行って……。
「僕も、あなたを愛しています。」
「ぼくも、あなたを、あいしています。」
「ぼkUも、ぁnaたを、あぃ、してiまsU。」
(お題 Love you)
吸血鬼の僕にとって、よく笑う貴女は太陽のような人だった。
明るくて、熱くて、眩しくて。そんな貴女に近づけば、僕は灰になってしまう。そう感じる程の人で。息が詰まる思いを感じる。
僕は身を焼く太陽や聖職者達の群れから逃れ、屋敷の一室で本を読み、使用人が持ってきた食事を食べ、血を飲んでいたい。それだけが望みだった。
日光も貴女もちゃんと対策をすれば入ってこないことだけは救いだっただろう。だから、日が昇る時間になれば、部屋のカーテンと扉を閉めて、息を潜める事が、いつの間にか日課になっていた。
けれど、今日、貴女は扉を開けてしまった。
日光が入ってくる、貴女が入ってくる。まだ死にたくなくて、小さな悲鳴をあげて必死になって後退りをするも、すぐに追い詰められてしまった。
「ねぇ、今日、私と一緒に登校しようよ。引きこもって、漫画とコーラに溺れてちゃ、体に良くないよ……。」
貴女は僕の細い腕を掴む。火傷はしなかった。それなのに、震えが止まらない。
「もう、誰も貴方をいじめさせないから。私が、貴方を守るから。だから……一緒に学校に行こうよ。」
太陽のような貴女は酷く悲しそうな顔で、僕を見つめる。
僕は……どうすればいいのだろう。また、心に杭を打たれるために、外へ出るべきなのだろうか……。
(お題 太陽のような)
私は15年前にこの世界に生まれ落ち、物心が着いた時から『勇者』になる夢を掲げ、剣を振ってきました。
きっかけは酷く単純な物で、この村を襲っていたモンスターの大群を一人で倒した『勇者様』が、まだ幼かった私に手を振ってくれた事です。
そんな些細な思い出を胸に抱いて、私はトレーニングを欠かさず、弱いモンスターを倒して経験値を稼いでいたのです。それ故、長くやり続けたからか、時折村の人から褒められる事も増えてきました。
けれど、それは突然起きました。
私達とは違う、変な服を着た青年が、突然召喚されたのです。村の司祭いわく女神の力らしいのですが……。
彼は初めて剣を握ったにも関わらず、私が10年以上かけて覚えた剣術の倍以上の強さで、モンスターを屠りました。
彼は魔法を知らないと言っていたのにも関わらず、死んだ人間を蘇生させる魔法をいとも簡単に扱いました。
村の人たちは喜びました。彼が召喚されて1日立たずに、彼は『勇者様』と呼ばれるようになりました。
それ以来、前の『勇者様』の姿を見ていません。
私は、『勇者』になることが出来ませんでした。
0から必死になって覚えてきたスキルをもってしても、やっとこさ記憶の中の『勇者様』に追いつけるようになったとしても。
突如現れた天才には叶わなかったのです。
ねぇ、女神様。私の15年間はなんだったのですか?
女神様。ねぇ、女神様。お答えください。お答えください……。
(お題 0からの)