『凍てつく鏡』
もうとっくに冷めきってしまった。
今更なんとも思わないしどうってことはない。
今に限った話ではないのだから。
私の心は触れられないほどに冷たく凍っていて、
溶かすことはもう出来ないんだよ。
これから別れを告げるあなたに会うための
メイクをしている時の鏡越しに、そう思った。
また来る春を、長く待とう。
『雪明かりの夜』
ひとりで遠くへ旅行に行った。
たぶん、今まで行ったどの旅行よりも、
私の心を魅了した場所だった。
冬の寒い日だった。
宿まで歩く計画を立てたせいで、
雪が積もっている中、30分くらい歩いた。
普段雪が降らない地域にいるからとても疲れた。
でも、視界は驚くくらいきれいだった。
視界いっぱいに銀色世界が広まって、
違う世界に来たんじゃないかと思うほどだった。
もう星空が見える時間なのに、何故か明るかった。
それなのに、上を見ると数え切れんばかりの星たち。
一生忘れないと思うし、走馬灯に出てくると思う。
もう一度行きたいな。
『祈りを捧げて』
どうか、私のことをすきになってくれますように、
と祈った。
毎晩寝る前にはそう考えてた。
それなのに、どれだけ願ったとしても、
私を見てくれることはなかった。
この先もないんだろうなって心の底では思ってるけど、
少し期待しちゃって、今も毎晩願ってる。
どうか、私のことをすきになってくれますように。
『遠い日のぬくもり』
最後に手を繋いだのはいつだろう。
最後に抱きしめたのはいつだろう。
もう、思い出せないくらい前な気がした。
ずっとすれ違って、
お互い何も言えないまま時間だけが過ぎた。
もう戻ることは出来ないのかな。
日々を過ごす中での、
ひとりだけのぬくもりが寂しいのは私だけかな。
ふたり分のぬくもりが欲しいよ。
『揺れるキャンドル』
誕生日ケーキの上にあるロウソクに火をつけた。
電気を消したら、
当たり前だけど明かりはロウソクしかない。
呼吸をすると、ゆらゆらと炎が揺れる。
ふっと炎を消すと、今度は白い煙が踊り始める。
いつでも簡単に消えてしまうあたりが、
まるで命のようだと、ふと思った。