『揺れるキャンドル』
誕生日ケーキの上にあるロウソクに火をつけた。
電気を消したら、
当たり前だけど明かりはロウソクしかない。
呼吸をすると、ゆらゆらと炎が揺れる。
ふっと炎を消すと、今度は白い煙が踊り始める。
いつでも簡単に消えてしまうあたりが、
まるで命のようだと、ふと思った。
『光の回廊』
たまたま見かけて訪れた寺院。
天気は曇っていて、少し薄暗い気もする。
ふと、廊下があることに気がついた。
あぁきれいだな、と思って見ていると、
タイミングを合わせたかのように光が差し込んできた。
今しかないと思って、
急ぎでカメラを起動させシャッターを切った。
今日でいちばんの写真が撮れたんじゃないかなと思う。
『降り積もる想い』
まるで雪のようだと思った。
積もれば積もるほど、気持ちは大きくなって、
一向に消える気配がない。
会えば会うほど、舞っている雪は吹雪になった。
より一層雪が積もって溶けなかった。
どうしようもないと思った、もう元には戻れなかった。
どうにか積もり積もったこの雪を消したかった。
私は雪が降らない地域に住んでいるから、
自分の背よりも高い雪の壁をなくす方法も、
雪かきの方法も知らなかった。
暖かくなって自然に溶けるのを待つ以外に、
私にできることは何ひとつとしてなかった。
『時を結ぶリボン』
小さい頃に、
顔も覚えていない隣の家の子に貰ったリボン。
何故かは知らないけど、
ずっとお守りみたいに身につけて過ごしてきた。
大学生になって家を出て、久々に実家に帰った時、
ちょうどいい天気だったから散歩をした。
本当に偶然、
ずっと会っていなかった隣の家の子に会った。
リボンをくれたあの子。
なんか、よくわかんないけど、
近くに寄ったから久しぶりにふらふら歩いてたらしい。
私が身につけてるリボンを見て、
まだ持っててくれるんだ、うれしい。
って、記憶の欠片で残っていた笑顔と合致した。
また会えてうれしいかった。
『手のひらの贈り物』
いつだったかのデートの日。
休憩がてら喫茶店に入って、私はカフェラテを頼んだ。
あなたはコーヒーを頼んでたよね。
これから行く場所とか、夜何食べようかなって、
何気ない話をしてた。
急に私の手を取って左手の薬指に触れたあなたは、
お揃いの指輪を付けるのがたのしみだって、
とてもやさしく微笑んで言った。
それが、私の脳に染み付いて離れない。