透月燈

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10/20/2024, 1:35:43 AM

いつしか、貴方と僕はすれちがっていた。
まるで、最初から離れていたように──。

「いつか」「また今度」

今後を約束した言葉はもう叶えられない。

僕たちは、互いの描く絵に惹かれあって付き合い始めた。遊園地に行こうとか、喫茶店行こうとか。一緒に絵を描きたいね、とも言っていたっけ。
些細なことだけどやってみたいと思っていたことが、全てが泡沫のように消えていく。
「ごめんね、好きな人が出来ちゃって…」
と熱っぽい、申し訳なさ故の潤んだ目をして僕に告げた。その頃には僕は彼女の絵だけではなく、性格までも、全てが好きになっていた。
結婚式の日。彼女の隣には知らない男性が一人。
これから先、貴方以上に好きになる人はいないのにと心の中で呟きながら、いつしかのあの子と目が合ったような気がして咄嗟に含羞んだ。
すれ違い、仲直りし、次第に交わる。それが少女漫画の掟みたいなものなのに。
そう思い、僕はゆっくりと執筆し始める。いっそ誰かに呼んでもらえれば報われるような、そんな気がしていた。
僕がいくら貴方を心から愛していたということを文字に起こしたって、絵に描いたって、ただ虚しくなるだけなのに。だって、もう二度と貴方に辿り着くことは出来ないのだから。
いつかの彼女の微笑みを思い出す。
振り返っても誰もいない。貴方の付けていたムスキーノートな香りだけがほんのりと部屋に残っているだけだった。
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お題:すれ違い

続けて自己紹介をさせていただきます。
はじめまして、透月燈(すきづきあかり)と申します。
実話なのか、それとも幻想の話なのか、はたまた混合した話なのか。そんなちょっぴり不思議なお話を投稿していけたらと思っています。
学生なので拙い文章ではありますが、あたたかい目でご覧頂ければ幸いです。