見渡す限りの青い空。
そこに、飛行機が雲を残しながら、ゆっくりと進んでいく。
平日の真っ昼間、私は小さなワンルームのリビングで寝転んでいる。
窓際から見える青い空の奥に、小さく小さく浮かぶ白い飛行機を見ながら、ふと、彼のことが頭に浮かんだ。
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まさか日本の端と端で遠距離恋愛することになるなんて、
2年前は思いもしなかった。
前に会ったのは、いつだったっけ?んーと……半年前か。
最初は、距離なんて関係ないって思ってた。
“お互い働いてるのだから、2ヶ月に1回くらいなら会いに行く金銭的余裕はある。”
“もし会えなくても、毎日電話したらいい。”
彼も私も、無謀で無責任な自信に満ちていた。
だけど、現実はそう甘くなかった。
お互いの仕事の休みは合わないし、一人暮らしの身で経済的な余裕はなかなか生まれず。
毎日の電話は、最初の1週間しか続かなかった。
結局、この2年間で会えたのは、夏の長期休みや年末年始と……片手で数えられるレベルだ。
彼の休日がズレて会えなくなる度、彼は何回も謝ってくれた。
ウソや誤魔化しが嫌いな人だから、テキトーな断り文句ではなく、本当に仕事だったのだと思う。多分。
彼の休みに合わせて私が有給を取って、会いに行った時もあったけれど、
徐々に私の仕事も忙しくなり、簡単に休みも取りにくくなっていった。
その分、会えた時の喜びはひとしおで。
どこに行くわけでもなく、ちょっと高めのホテルや旅館の中で映画を見たり、酒盛りしたりして過ごした。
片時も離れず、私も彼に甘えていたし、彼も私を離そうとしなかった。
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そんな矢先、2度目の転機が訪れた。
私の方が体を壊してしまい、1ヶ月仕事を休むことになった。
休職前の上司の態度から察するに、復職したところで私の居場所はなさそうだし。
ああ、これが辞めどきってやつなのかな……
もう少し前向きな気持ちが残っていたら、転職活動するんだろうけど、今の私は何もやる気が起きなかった。
かたや彼の方は忙しいながらも仕事は順調そうで。
正反対の私の状況を打ち明けることはなかなかできずにいた。
彼からのLINEの返事は、ここ数日返せていない。
日々に忙殺されている彼に、これ以上負担をかけたくなかった。
こんな私じゃ、彼とはもう釣り合わないんだろうな。
彼との関係もこのままフェードアウト……?
はぁ、なんかもう疲れたや。なにも考えたくない。
しばらく一人になりたい。
私はそのまま、現実から逃れるように目を閉じた。
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