ミズノエノエノキ

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12/31/2024, 3:44:16 PM

「良いお年を〜」
「良いお年を〜」
友人達と別れ、帰路に着く。
田舎の進学校に通う私達の帰り道はバラバラで、友人の中で同じ方向に帰るのは幼馴染1人だけだ。
「なんかさ、今年もあっと言う間に終わっちゃったね」
「……」
最近、コイツとは会話が続かない。何とか入試には受かったけど、赤点ギリギリ回避してる私と、学年首席様とじゃ話が合わないのかもしれないけど、私達の関係はずっと変わらないと思ってた。
「振り返ってみると、色んなことあったよね」
「……」
皆といるときはそうでもないのに、2人だと何を話せばいいのかわからなくなって、当たり障りのない話をしてしまう。私も悪いのかもしれないけど、今日のコイツは少し様子がおかしい。
「……」
「……」
難しいことは苦手だ。直球勝負で行こう。
「何か言ってよ。会話になんないじゃん」
「……」
「……」
もう家の前まで帰って来てしまった。まあ、また来年に話せばいいか。
私達はそれぞれ隣同士の家の玄関の前に立ち、扉を開ける前に、挨拶を交わす。
「それじゃ
「ぼ、僕は……」
うわ、急に話し出すな。びっくりするだろ。
緊張してるのが伝わってきて、私も息を呑む。
「僕は、その……。…………時間ってのはずっと連続してて、時間は時間に対しては不変だけど、人間の認識には限界があるからそれを区切って解釈してて、それは地球の自転約1周を一日としたり、公転で1年を決めたりして、時間を認識して、節目を作っていて……」
「長い!」
「つ、つまり、僕達の関係も節目を作って、来年をもっと良い年にしたいってこと。」
「難しい!わかんない!」
「好きです。付き合ってください!」
「……良いお年を」
「えっ?それってどういう?」
「さぁね?」
私は玄関の扉を開けた。

6/12/2024, 4:15:46 PM

目を瞑り、思い切って口に詰め込むと、一気に広がる青臭さと苦み。
「まずい……」
つい、口から漏れる。もう取り繕う必要のない正直な感想。
昔からずっと、嫌がる君の代わりに食べていた。本当は私も嫌いだったのに、平気なふりをして。そうして君に尽くせば、ずっと君の隣で君の一番でいられると思い込んでいた。
でも、そうじゃなかった。噛みしめると一層強く、青臭さと苦みを感じる。

4/25/2024, 4:42:19 PM

私は空を見るとき、宇宙のことを考える。そして、それは、即ち地球のことを考えることである。宇宙を漂う塵、ガス、そういったものが集まって星はできる。ならば私達も塵から生まれているのだ。流れ星も、地球に降り注ぎ、地球の体積の一部になり、そして生命へと変わっていく。だから私達は流れ星に願いを込めるのかもしれない。生命のないものが生命に変わっていくように、形のない願いも、いつか形を持って私達の眼の前に生まれ変わるようにと。