あの当時は生きることが地獄にしか思えなかった。
とにかく早く楽になりたかった。
何もかもが無意味で、明るい未来なんて想像つかなかった。
あの日々を懐かしく思えるほど、長い時が経った。
あの地獄を乗り越えられた私なら何でもできると信じている。
#懐かしく思うこと
喫茶店に一人で行くと思わず紅茶を注文してしまう。
もともと紅茶は苦手で、あなたに一口もらったときも顔を顰めてしまったぐらいなのに。
あなたをいつまでも忘れられなくて苦手な紅茶を我慢して飲む私は、相当な馬鹿だ。
#紅茶の香り
あの時の私は幼すぎて、あなたが家を出て行った理由なんて理解していなかった。「なんでいないんだろう」ってずっと思ってた。ただ、あなたがいない理由はなんとなく聞いちゃいけない気はしてた。なんとも思ってないように振る舞ったけど、ほんとは寂しかったんだよ。
大人に近づくにつれて、あなたが家にいない理由が理解できるようになってきた。今でもどんな事情があったのかは怖くて聞けていないけど。
あの時「行かないで」って言ったところであなたの選択は変わらなかっただろうけど、私の成長する姿をそばで見守ってほしかった。
#行かないで
雲ひとつない晴天の今日ならできる気がした。
長い間悩み続けても答えは出なかったのに。
決心のきっかけは「天気が良かったから」。
こんな気軽な決心で上手くいくかは分からないけど、自分なりに頑張ってみようと思う。
#どこまでも続く青い空
私の家では季節の始まりに「衣替えの日」が設定される。
その日は朝からそれぞれの部屋が騒がしくなり、全員がバタバタと忙しく動く。
父と母の部屋では母の指示のもとで父が動き、着々と衣替えが行われている。時々「それはそこじゃない!」と母の声が部屋に響く。
幼い妹2人の部屋では衣替えの途中でファッションショーが始まったようだった。2人はいろんなスカートやワンピースに着替えてモデルごっこを楽しんでいる。母が覗きにくるまでは衣替えが進むことはないだろう。
家族の騒がしい声を聞きながら私は一人部屋で衣替えを進めていく。家族の存在を感じながら季節の移り変わりの準備をするこの時間が私は好きだ。
#衣替え