【手紙を開くと】
手紙を開くと微かにあなたの匂いがした。
清潔な洗剤の香り。
あなたの家はクリーニング屋さん。
だからあなたの家に行くといつもいい匂いが部屋に溢れていた。
手紙を開くと微かに花の匂いがした。
芳しく華麗で甘い香り。
君の家には沢山の花が売られている。
いつも綺麗な花に出迎えられた。
あなたは今何をしていますか?
君は今何をしてるかな?
会いたい。
会いたい。
早く。
早く。
あなたに。
君に。
「「会いに行こう」」
【すれ違う瞳】
いつからだろう。
あなたの事がわからなくなったのは。
いや、初めから分からないことだらけだったのかもしれない。
だって、思えば一度だって私に好きとか愛してるとかそんな言葉をくれたことなんてないんですもの。
それに会えるのは月に一度だけ。
それもあなたの指定した場所。
ねぇ。
あなたは私の事本当に好き?愛してくれてる?
隠していることがあるなら教えて。
そう。
ならもう一緒にはいられない。
もうこれっきり会うのはやめましょう。
さようなら。
…何?痛いわ。この手を離して。
待ってくれ?
ならあなたの秘密を教えてくれるの?
無理なのね。
それでも私と一緒にいたい?
ずるい人。
いつもそうやって私を振り回して。
やっぱりあなたとは一緒にはいられない。
…私は、私だけ見つめてくるあなたの瞳が好きだったの。
だけど、今日は一度だって私にその瞳を向けてはくれなかったわ。
もう最初から答えは出ていたのよ。
違わないわ。私たちは最初からこうなることが決められていたの。
さようなら。
もう会うことはないでしょう。
それじゃあ。
(あなたがどこかのスパイでも悪人でも私はあなたに付いて行ったわ)
【青い青い】
青い蒼い空の色。
蒼い青いクレヨンの色。
蒼い青い洋服の色。
君と見た空。
君が君が描いた僕の絵。
君が踊った青色のワンピース。
全部全部君が僕にくれた思い出の青の色。
【好きになれない、嫌いになれない】
もうやめにしたいのに。
こんな関係いつまでも続くわけない。
だってあなたは私の先生で。
私はあなたの生徒でしかないのだから。
「もう終わりにしよう」
何度目かの別れの言葉。
「どうして?」
「こんなこと…良くないよ」
「今更」
「だけど…」
「ねえ、先生。
この世に悪いことなんて沢山あるんだよ。
なのにどうして私たちのしていることは誰かに責められなくちゃいけないの?」
「それは…」
「答えられないなら、別れる必要ないよね?」
そうだ。
私はただ先生を好きになっただけ。
何も悪いことなんてしてない。
それでも許されないのなら。
この世に綺麗な恋などあるのだろうか?
【夜が明けた。】
帰りたくなかった。
居場所なんて何処にもなかった。
ただいま。
おかえり。
想像しただけで反吐(へど)が出る。
だけど、それが手に入らないからそう強がるしかなくて。
好きでもないのに愛想を振り撒いて。
愛してもないのに体を開いた。
誰でも良かった。
そこに何もなかったとしても。
薄汚く汚れていくんだとしても。
それでよかった。
それが良かった。
生きていたくなくて。
それでも生きなきゃいけなくて。
やりたいことも。
夢もないのに。
小さな事で良かったの。
それがどんなに些細なものでも。
愛して欲しかった。
本当に?
それすらももう分からないよ。