【意味がないこと】
あなたの前でいくら涙を流したとて、あなたはなにも感じはしないのだろう。気にかけてもらえるのはいつだって素直で可愛くて華奢などこか儚げで守ってあげたくなる女の子。もう女の子ではなくなってしまった私は、あなたにはきっとどうしようもなく惨めで醜い女にしかその瞳に写されていないんでしょうね。その娘を真似て自分を傷つけても、軽蔑と嘲笑の視線が私の心を抉るだけ。私はあなたの気を引く術を知らぬまま、歳ばかりが過ぎただけだった。
【あなたとわたし】
あなたはいつだってわたしを優しく照らしてくれる。あなたがいなければわたしひとりでは輝くことができない。青空広がる世界にあなたがいて、夜空輝く世界にわたしは存在する。あなたとわたしが交わることは滅多にない。あなたは自ら光と熱を発し地球上の生けるものたちに生命を芽吹かせる。その輝きはわたしにとって眩しすぎた。わたしの世界はいつも暗闇と静寂に覆われていた。だから余計求めたくなるの。あなたはわたしの明月。
【柔らかい雨】
見上げれば空は灰色に染まりつつある。暗い雲に覆われた青空は、今の私の心模様と似ていた。どうしようもない出来事。感情。それらが心に雨を降らせる。それはもうどしゃ降りだ。ベンチに座り、あなたが通らないかと期待したけど、きっとあなたは会いたくないんだね。涙が零れそうになる顔を上げた。もうすぐ雨が降ってくる。思い出すのはあなたの優しい声。好きだと思った。真剣な眼差しにどきどきした。目が合うと嬉しくて思わず笑顔がこぼれた。会いたいです。そんな願いは降ってきた雨に欠き消された。
【一筋の光】
毎日が嫌になっていた。生きる気力なんて湧いてこない。何の変化もなく、何もない自分にも嫌気がさす。消えてしまいたい。そう思うのに根性無しで死ぬこともできないから辛い。やらなければいけない課題は溜まりすぎている。今更どう足掻こうと性根の腐ってる自分を変えることは中々難しい。一筋の光なんてそんなものとつい毒づいて誰にもわかってなんてもらえないことは重々承知。だけど、それでも求めてしまう。いつか、いつかと。
【哀愁を誘う】
夕闇を背に公園のブランコが揺れている。何とも言えない気持ちが心を擽る。見慣れてるはずの空の色は夏の青々としたものとは違って暖かくそしてどこか物悲しさを漂わせている。手にはさっき買ったばかりのおしるこの缶、最近ますます寒くなった。缶を開け、おしるこをひと口喉に流し込んだ。温かい汁粉の優しい甘さが冷えた身体を暖めてくれる。温かい飲み物が美味しい季節になりました。