お題「君と出逢ってから、私は…」
口当たりのいい言葉を見繕って
周りをうかがっていた
作りものの僕を喜ぶ人たちの中で
これが僕だと思っていた
だけど
そこから抜けた時にわいてきたのは
ざわり
とした
僕
言葉にしきれない思いは
ただただ線を描き
交差が生み出す幾何学模様に
ぽつり
ぽつり
色が生まれる
口当たりのいい言葉を
いったん横に置いてみたら
部屋の隅で声をころして縮こまる
君を見つけた
色とりどりの模様が
すくい上げるのは
思いの奥に宿る
いたみ
もういいよ
君の言葉を手繰る
僕
お題「優しくしないで」
この前泣いたのはいつだろうか
小さい頃はよく
泣いたり
笑ったり
していた
気がする
大きくなるたびに上手く
泣いたり
笑ったり
出来なくなった
気がする
僕はここに居るけど
僕を見ないでください
僕は壁の染みだから
僕に尋ねないでください
僕はただ眺めているだけ
僕はただ聴いているだけ
心が鍵をかけたのは
いつだろう
他人の言葉を借りないと
声が出せないから
自分の言葉はひっそりと
誰にも見つからないよう
鍵付きのドアの向こうに
投げ入れる
君の気まぐれな手が
壁の染みにコツン
コツン
当たる
否
叩く
錆だらけの鍵穴は
まだ生きているだろうか
お題「カラフル」
君からもらったジェリービーンズを
そっと噛む
少しの歯ごたえ後に広がる甘さが
凍ったアタマに沁みてくる
君はいつも彩りをくれるけど
僕はいつも白黒の中にいて
君の世界をうらやみながら
僕の世界でじっと
じっと
扉が開くのを待つ
外で遊ぼう
幼い声が求めているのは
風のきらめき
土のぬくもり
扉が開けば
白も黒も彩りだよ
凍ったアタマに沁みてくる
君の声は瑠璃色
お題「楽園」
僕の指先はありますか
光の行方を追いかけたら
見知らぬ場所に着きました
僕の爪先はありますか
見知らぬ場所は色にあふれ
花たちの語らいで賑やかです
僕の背骨はありますか
赤
青
白
黄
紫
橙
どの花もおしゃべりに夢中です
僕の鼓膜が静かにふるえる
ココニイタイ
ココニイタイ
ココニイタイ
ココニイタイ
僕の声が静かにふるえる
お題「風に乗って」
さらり
ふわり
ゆらり
はらり
シャツの裾で遊んで
駆ける
匂いを連れて
熱を持って
いつか空にまぎれる
日付が変わる前のニュースで
今日の答え合わせをしよう
窓を開けて
今日の残り香を迎えよう
パジャマを着たら
今日の名残は洗濯かごに
絡まった想いは夢の中に
僕のうたも
連れていって