梅雨時期にも関わらず薄く張った雲
まるで幼子がちぎったように散らばって
月の光も星の光も柔らかく地上に落とす
「…まだ…夜は…冷えるね…」
拙い子供のようにゆっくりと放たれる声
穏やかで抑揚の少ない声
ぬるく湿気を含んだ風が彼女の声と白く染まった髪を撫でた
「でも俺はこの時間が好きだなぁ」
彼女の声と正反対の無邪気な声で返した
太陽の光は皮膚を染めて痛みを覚えさせる
彼女の褐色肌は元からと聞くが、近くにいる彼の肌は弱さ故にすぐ焼けるだけ
だから月と星が優しく話して
街が汚れを忘れたように光を零すこの時間が好きだ
「…嫌い…では…ない…」
彼の言葉を否定せずに上から言葉を優しく渡す
蜘蛛の足をイメージした特徴的な義足を付けてもなお彼女の巨体には敵わない
ワインレッドの瞳を彼女に向けて優しく笑って
「此処ね、俺のお気に入りの場所。たまに来ると良いよ、凄く綺麗だから」
彼女のマンダリンオレンジとブルーグリーンのオッドアイが視界に広がる光に応えるように煌めく
表裏が交わる汚れた街
そこに捨てられた彼と逃げてきた彼女
お互いの手はきっと汚れている
それなのに…
「うん…また…来る…」
求めるのは綺麗なものばかりだった
あまり表情の動かない彼女の瞳が喜びに揺れる
それが分かるからこそ嬉しそうに彼は笑う
来た時期も生きてきた世界も何もかも違う
だけどこの汚れた街で出会えた
仲間である2人が
2人と仲間達が
これからも笑える事を
ソッと祈って
題名:街
作者:M氏
出演:🕷🌺
【あとがき】
自分が産まれた街、育った街
実はと言うとM氏はあまり知りません
地元の名産とか
1番近くにある美味しいお店とか
遊びに行ける場所とか
ですが大切な人をサラッと綺麗な場所に連れて行けたりするシチュエーションには憧れがあります
イケメンですね
ですが出演してくれた2人共お互いに恋愛感情を1mmも抱いていません
家族のような存在だから大切にしている
本当にそれだけでこんなデートみたいな事しています
リア充この上ないですね
羨ましい限りです
「やりたい事ですかァ」
少しばかり長いショートカットの少年に問かければ特徴的な話し方で聞き返される。
そんな所に神経なんて無いだろうに…ゆらゆらと揺れるアホ毛は彼が悩んでるのを表していた
「あんまりパッと思いつきませんねェ。やらなきゃいけない事なら山積みなんですけども…」
少しばかり広く感じる部屋
大柄な人間が寝転がれば埋まってしまう大きさのソファ
その前に置かれたテーブルに大量の書類
未だあどけなささえ感じる少年が捌くには多いのではと感じざるを得ないソレをチラリと見ては軽く息をつく彼
「今やりたい事…ン〜…とりあえずコレ終わらせてご飯食べたいです、お腹すきましたし」
箸の持ち方も上手くない彼に教養は感じられない
だがペンの持ち方は酷く綺麗に感じた
じっくり考えて出した答えは“やりたい事”を問われた際に出すものとしては物足りないと受け取れる
だが本当にそれしか無かったのだろう
キュルル…なんて小さく鳴く腹の虫がゆったりとしたパーカーから聞こえるから
題名:やりたいこと
作者:M氏
出演:🎗
【あとがき】
一言に“やりたいこと”を問われた時って上手く思い浮かびませんね
少なくともM氏はそう感じます
老後を考えるには若いですし
無謀に語るには大人ですし
身の程を知ったようなものしかあげられませんね
出演してくれた少年のように空腹を満たしたいとか
眠いから寝たいとか
絵を描きたいとか
誰かを抱き締めたいとか
誰かに抱き締められたいとか
最後2つに関しては身の程知らずですね