まだ知らない君
学生時代。
君が僕の嫁になる前の話。
「罰ゲームで告ったけど本当は君が好きで
失敗した時の言い訳にしてたんだ。」
────「知ってるよ。」
知らなかったのは僕だったみたいだ。
日陰
──その木漏れ日が眩しくて
鳥のさえずりが聞こえてくる季節。
私はいつも通り読書をしながら
あの木の下で眠っているあなたを
窓際から眺めていた。
あなたの茶髪が陽にあたって
ゆらりと揺れている。
──3時のおやつの時間。
手作りのスイーツを
ガーデニングに運んで
あなたを呼ぶ。
「今日も天気がいいわね」
しっかりめに焼いたスポンジに
今にもとけてしまいそうなクリーム。
艶のかかった甘酸っぱい果物と
爽やかな香りのミント。
あなたの好きな甘いケーキを
作るのが私の楽しみ。
ゆったりとのんびり、
2人だけの甘い時間を堪能する。
ふわっと風が吹いて
あなたの茶髪が揺れた時
小さな声が聞こえた。
「また会いに来るね」
帽子かぶって
ひまわり畑の麦わら帽子の男の子。
無邪気に笑っていて羨ましかった。
帽子かぶればあの子のような
明るい無邪気な笑顔を出せるはず、
そう思いながら帽子かぶって。
小さな勇気
────今日は結婚記念日
プロポーズの思い出は
指輪に詰まっていて。
これ以上にない宝物だった。
買い物の帰り道。
いつも通り鍵を開けようと
した時私は、はっとした。
どうしようと思いながらも
泣きじゃくる私は焦っていた。
なんで今日に限って…
結婚記念日の用意をしたい、
けれど指輪を探したい
強い気持ちが混ざってしまって。
彼が帰ってくる夕方まで
探すことにしたけど、
簡単に見つかることはなくて
ついに旦那からのメッセージが。
春樹くんごめんなさい!
指輪を無くしてしまって…
勇気を出した。
言葉を振り絞って電話で伝えた。
ふふ、ねぇこれのこと?
ビデオ電話に切り替わった時
春樹くんは笑っていた。
無くしたはずの指輪と薔薇を抱えて。
早く帰っておいで、ご飯食べよう。
家に帰れば玄関で彼は
あの日と同じ台詞で迎えてくれた。
どんなことがあっても
僕の一番近くで笑ってくれますか。
わぁ!
転んだ先に画面が割れたスマホ。