手のひらの宇宙
可能性を奇跡を
この手に握りしめて。
目を閉じれば不思議なことに
頭の中で花が咲く。
宇宙はもっと広い。
宇宙と比べるとこの手のひらは
ちっぽけな存在かもしれない。
けれどこの自分の手のひらで
あなたの花を咲かせたい。
セーター
──ホーホケキョホーホケキョ
カーテンの隙間から差し込む光と
聞き慣れない鳥のさえずりで
ふと目が覚めた。
「んー…よく寝た。もうこんな季節かぁ」
朝から多く走ってる車
遠くから聴こえるウグイスの鳴き声
窓から眺めていては増えていく人々。
今日は気温は低いけど日差しが暖かい。
10年ぶりに会う約束をしたお友達と
ちょっと小さいけれどお洒落な店へ
手作りのスイーツを買いに行く。
遠足に行く前日の子供のように
どこに行こうか?何を着ていこうか?
とワクワクな気持ちと10年ぶりに
お友達と会うのでちょっぴり不安もある。
この日に着ようと決めていた
私の大好きな色、薄ピンク色のセーターと
丁寧に三つ編みしてから
ポニーテールと組み合わせて、
日が差しているのでお気に入りの帽子。
10年前のアルバムを眺めながら
コーヒーを飲んでは
どんな大人になったのか期待を膨らませ
小走りで玄関を出た。
切符を購入しバスに乗り
待ち合わせ場所に移動する。
待ち合わせ場所に着き、
久しぶりにお友達と顔を合わせた私。
「ゆーちゃん久しぶり!
え、もしかして……笑?」
私とお友達は声に出して笑った。
だって、本当に仲良しだと思えたから。
──このセーターは二人のお気に入り。
何年経ってもこの思い出は
ずっとずっと心に残り続ける。
微熱
───3泊4日の修学旅行。
今日は京都で八ツ橋工場を見学する予定がある。
ガタンガタンと揺れるバスの中で
僕は考え事をしていた。
独りぼっちだし友達1人も居ない、
先生に誰かと班を組めって言われても
引き籠もりだった僕にはハードルが高すぎる。
お降りの際は、バスが止まってから────
アナウンスが聞こえバスを降り
僕たちは八ツ橋工場へ移動した。
工場で働く人の話を長々と聞いては
見学するために班を組むことになった。
「ど、どうしよう…」
不安でたまらなかった僕は
仮病を使おうかな…と迷っていた時、
後ろから透き通ったような声が聞こえた。
「ねぇ、良かったら私と班組まない?」
「え…いや、あっ、、えっと…ごめん!」
まさか声をかけられるなんて…
しかも僕が気になってる女の子。
前に教室の掃除をサボってる人達の代わりに
綺麗に丁寧に掃除をしているのを見た時から
教室で視線を追うようになって…
君に恋した女の子と話せる機会なんて無いのに
僕はドキドキして思わず逃げてしまった。
仮病を使い、見学を休んでしまった僕は
逃げてしまった罪悪感と
誘おうとしてくれた彼女の気持ちが嬉しくて
ちょっとだけ、にやけた。
───数十分後、彼女の班が見学が終わり
休憩時間になった。
「大丈夫?具合悪かったんだね、
誘ってごめん!」
振り向くと君が不安そうにしていた。
仮病を使って休んだので心配されたけれど
勇気を出して今度こそ…と返事をした。
「あ、ありがとう!」
君は綺麗な笑顔をして僕の頭に触れた。
この時初めて勇気を出す事が
こんなに嬉しいなんて知った。
それと同時に彼女の手に触れたからか
僕の顔は熱くなっていた。
これは微熱だ、照れてない。
そう自分に言い聞かせた。
───これは微熱だと願って。
太陽の下で
───激しい雷雨が明けた翌日。
眩い太陽が灰色の雲から顔を覗かせている。
「ねぇ、何を作ってるの?」
台所からふわっと甘い香りと
野菜たちの香ばしい香りがして
僕は何を作ってるのか気になった。
少し覗いてみると僕の大好物の
野菜炒めとアップルパイをお弁当箱に
詰めたものが机に並んでいた。
「あなた、今日は天気もいいのよ」
君は嬉しそうに三人分のおかずを
お弁当箱に詰めながら口ずさむ。
僕は部屋に引きこもっている祐樹を誘おうと
少しぎこちない笑顔で
「祐樹、良かったら外でご飯を食べないか?」
祐樹はしばらく黙ってから口を開いた。
「……分かった」
少しそっけない返事。
だけれど僕は嬉しいような緊張するような…
そんな気持ちになった。
時間を気にしては支度を済ませ、
車に乗り目的地に向かう。
────目的地に着き
風通しのいい草原で敷物を取り出した。
朝から張り切って作ったお弁当箱と
温かい紅茶を用意し、手を合わせる。
「いただきます」
サンドイッチに色々な具のおにぎり、
僕の大好物の野菜炒めに
前に祐樹が美味しいと言ってた卵焼き。
会話は少ないけれど
川の流れる水音や鳥の鳴き声
自然で溢れてて心地よかった。
無理もないよな…焦らずに仲良くなろう、、
と祐樹の様子を疑いながら
眩い空を眺めていると、
「と、父さん、これ美味いから…食べてみて…」
祐樹は小さい声で照れくさそうに言った。
君は安心したような表情でふふっと微笑んだ。
僕は嬉しくて涙が零れそうになるのを堪え
食べかけの甘い卵焼きを口に入れた。
「うん、、うん、、とても美味しいよ!」
───すぐに仲良くなることは難しいけれど
心を開いてくれるまでそう遠くはないかな。
泣かないで
───ふわっと強く香るラベンダーの花束。
花屋に寄り道する時君は必ず呟くんだ。
「特に深い意味は無いけれど、
元気になれるから好きなんだ~」
ラベンダーの花を蒸留して作るアロマオイルに
乾燥させたものをお湯で入れたハーブティー。
ラベンダーを粉砕して石鹸や入浴剤に混ぜたり
乾燥させたものを束ねて
ドライフラワーにすることも出来る。
リラックス効果や眠気を誘う効果で
君はいつも緊張ばかりの僕にピッタリだって
教えてくれた。
そうだ、今日は君の誕生日だったよね。
プレゼント沢山迷ったけれど
きっとラベンダーが喜ぶと思って
実は沢山買ったんだ。
でもすぐに枯れても嬉しくないからと
ドライフラワーにしようと数日前から準備しては
喜んでくれるかなと期待を膨らませた。
───トゥルルルルル…
ん?なんだろう…電話がなっている。
出てみると友達からの電話だ。
「どうした?そんなに慌てて…」
「どうした?じゃないよ!
結菜が事故にあった!」
衝撃受けた僕は動揺を隠せず
全力で走り事故現場に向かった。
警察と救急車がファンファン…ピーポーピーポーと
音が鳴っている。
嘘だろ…結菜は無事なのか!?と
頭がいっぱいで呼吸も荒くなり僕は気を失った。
ごめんね…結菜………
────あの事故から1年経ち、
周りも落ち着いてきた頃
あの日君に渡せなかった
ラベンダーのドライフラワーを
遅めの誕生日プレゼントと一緒に
墓の前にそっと置いた。
スゥーと涙が零れ、止まらなくなり
子供のように泣きじゃくった。
ぶわっと風が吹いてラベンダーの香りと
共に聞こえてくる。
「泣かないで」