8/29/2024, 10:36:16 PM
打ちつけるような雨が、私をゆっくりと濡らしていく。
「やっと、だな…。」
そう呟いた言葉は、雨に溶けて消えた。
春の日差しみたいな、あたたかい人。それが、先輩の第一印象だった。
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「あーもう、最悪…。」
なぜ高校の校舎は、こんなにも広いのだろう。
次の化学の授業まで、あと5分もない。
雨のせいで偏頭痛もする。
思わずしゃがみこんでしまった。
「どうしたの?」
ふと、上から声がした。
内履きの色からして、上級生だろう。
顔を上げると、心配そうにこちらを見ている先輩がいた。
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その後、化学室まで連れて行ってくれて。
雨のことを、「桜流し」って言ってたっけ…。
その日から事ある毎に話しかけてくれる先輩を好きになるのにはそう時間はかからなくて。
告白して、OKされた時は嬉しかった。
「なのに、すれ違っちゃうもんな…。」
きっかけは、多分些細なことだった。
そのせいで二人の距離はどんどん離れていって、自分から別れ話を切り出して。
言葉はいらない。ただ、先輩に愛されたかっただけ…。
この雨は、しばらく止みそうにない。
𝑒𝑛𝑑