人肉

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7/9/2024, 9:14:49 AM

死神は雪の深い夜街に辿り着いた
今日の職場だ

ローブ目深に網を持つ
鎌ではない網だ

この世界では死者の魂は網ですくい取る

ふよふよと揺蕩う光をそうっとすくっていく

粗方取り終えた死神は、人気のない路地に
少女を見た

粗末な服で、この寒さは凌げまい

少女の側でその時を待つ

籠に入ったマッチは古く、箱が潰れているものもある

少女は少しでも暖をとろうとしたのだろう
廻りにはマッチの燃えカスが散っていた

死神に掬い取られる魂は
こぼれ落ちたマッチとともに

今夜も街を彩った




『街の明かり』

7/7/2024, 10:28:47 AM

こんはずじゃなかったんだが

わしはただ、似合いの男女の仲人をしただけじゃ
いい仕事したわと思ったんじゃ

なのに

今年もこの時期になると起こるデモ

【恋人同士を引き離す極悪人】
【二人の結婚を認めよ】
【年一なんて酷すぎる】

わかっとるわい
そりゃわしだってずっと一緒におらしたい

でも駄目だったじゃろ?
あやつらが二人でおるとイチャイチャして仕事せえへんし
そいで迷惑かけることのが問題じゃから

年一なのは苦肉の策
会議でもそう決まったじゃろが
なんでわしばっかり責められ―――

はぁ

会わせるんじゃなかったわい



『七夕』

7/3/2024, 8:45:14 AM

下駄箱から外に出た瞬間、一人がクシャミをした

「眩しいとクシャミでるんだ、これって4人に一人らしいぜ」

「は、は?オレは冷たいもの食べても頭キーンってならない体質ですけど?」

「え、じゃあオレはゲップが連続で出せるね」

「オレはどの関節でも自由にポキポキできる」

「じゃあオレは、えっとえっと―――」




『日差し』

6/30/2024, 11:12:41 PM

ああ、まさか君があの時の娘だったなんて。僕たちは運命だ

額の傷を見て放たれた一言に、
体中に憎悪が駆け巡った

赤い縄が繋がった相手が、貧しく貧相な娘と知って殺そうとした相手によくもぬけぬけと運命などと

でも確かにこれは運命か
再びこの男に巡り会えたのだから

忘れない
忘れられない

あの頃の恨み


この赤い縄をおまえの首に巻きつけてあげる



『赤い糸』

6/29/2024, 11:58:54 AM

あれはサメ

あれは肉球

あれはお餅


雲を見上げるときなんて
めちゃくちゃ暇な時か
めちゃくちゃ参ってる時

あれは手形

あれは入れ歯

あれは――――



さて自首してくるか


『入道雲』

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