なんとなく始めたことで、
ずっと続けてしまうと、
やめるにやめられなくなるというか
そういう事ってあるよね
コレとかね
『あの頃の私へ』
脱獄する予定だ
某映画みたいに、独房の壁を掘り、パイプをつたって外に出てやるんだ。
この部屋をあたえられたのは最期の幸運なんだ。
時間は腐る程あるからな
ガリガリ
ガリガリ
やはりフィクションとは違って、現実の壁は厚い。
それに角部屋とはいえ、必ずパイプへ続くのかもわかっていないが、この壁の脆さは無視できない。
ガリガリ
ガリガリ
焦るな 時間は腐る程ある
.......
.......
「おい、643番は相変わらずか?」
「ああ、飽きもせず壁こすってる」
「あの独房ってわざと脱獄心擽られるような仕様になってんだよな」
「そうそう、脆い壁、外れそうで外れない窓格子、絶妙なサイズ感の通気口」
「最近は意味深な番号が羅列されたメモ用紙を見つけたらしいぞ」
「そりゃ忙しいな」
「まさか今の状況すら刑期の内容に含まれるとか思ってもいないんだろうな」
「散々時間と頭使ってやっとゴールしたと思ったら速攻スタートに逆戻りとか」
「ま、しょうがないよな」
『逃げられない』
俺は今日という日を繰り返している
ループ系のアレだ
始めの方は意味がわからずパニクっていたが、4回目あたりから慣れてしまった。
というのも、同じ日を繰り返していても、特に困らないという事に気がついたからだ。
毎日同じ生活のルーティンを繰り返していた俺にとって、同じ日をループしたところで何も変わらないのだ。
むしろループしていることによく気がついたものだと自分を褒めたい。
病室で一人、植物状態の俺には仕事はしていないし、娯楽もない。
食事も採らないから飽きもしない。
ぼんやりとした意識を保ちながら今の状況を鑑みたところで、全くいつも通りの日常に平和を感じている。
それではおやすみ
また明日
『また明日』
私は禿げていない
禿げてないんだ
ちゃんと髪はある
透明なだけでちゃんとある
そう、私はホッキョクグマの獣人なんだ
私は禿げていない
『透明』
あなたのようになりたくて、
髪型を同じにしてみました
あなたのようになりたくて、
同じブランドを身に着けました
あなたのようになりたくて、
口癖を真似てみました
あなたのようになりたくて、
性別も同じにしました
あなたのようになりたくて、
身長も同じにするために、
ナタを持参して
あなたの帰りを待っています
『理想のあなた』