繊細な花
花開くときはあなたの傍で、美しい私を愛してください
枯れ果てるときは醜い私を見る前に、どうか捨て去ってください。
1年後
夫と離婚してから1年が経った。
仕事もどうにか見つけて、今は平穏な日々を送っている。
彼女が別れたのは、彼が相手を思いやれないことが原因だった。
家事を手伝うこともなく、彼女が残業で遅くなっても労りの言葉一つない。
極めつけは彼女が体調を崩して寝込んでいても、俺の飯はどうするのか?という呆れた質問をしてきた。
ユニークで一緒にいて楽しい人だった。
いつから彼は変わってしまったのか。
それとも初めから彼はそういう人で、彼女が見抜けなかっただけなのか。
そう言えば、離婚する少し前から彼がやけに協力的になっていた。
今まで気にしなかった家事に参加し、仕事から帰るとお疲れさまと声をかけられた。
しかし使ったシンクをそのままにしたり、ごみの分別が出来ていなかったりしていたので細かい修正は彼女がしていた。
むしろ余計に疲れてしまった。
けれど、少しだけ。
彼をただ愛していられた頃に戻れた気もした。
大人になってしばらく経ってしまったから、純粋な感情だけでは共に生きていくことは出来ないと知ってしまっただけだ。
せめてもう1年、彼が早く気付いてくれれば。
もしかしたら、違う人生があったのかもしれない。
そんな空想を彼女は一人笑い捨てた。
子供の頃は
道端の小さな花
真っ直ぐ伸びた飛行機雲
真っ赤な夕焼けに染まった空
のんびり歩く猫
子供の頃はすべてが大きく、すべてが輝いていた
大人になると忘れがちになるけど
世界って思ったより美しい
日常
いつもそこにあるもの。
安定と不安定のバランスが釣り合うもの。
好きな色
初めてのランドセル。
色とりどりに並ぶピカピカのランドセルに心が踊ったのを今でも覚えてる。
どれがいい?と聞いた両親の言葉に走り出して、ランドセルを選ぶ。
コレがいい!と選んだのは薄紫のランドセル。
一番気に入っていたのに、両親は何度もそれでいいの?と聞いてくる。
どうして?なにか間違ってるの?
段々と自信が無くなっていく私を見て、両親は心配したんだろう。
あなたが選んだならそれでいいんだよ。
とても素敵な色だね。
私は薄紫のランドセルを抱きしめて、コレがいい!ともう一度笑った。
私の好きな色。
私の心を彩った色。