好きな色
初めてのランドセル。
色とりどりに並ぶピカピカのランドセルに心が踊ったのを今でも覚えてる。
どれがいい?と聞いた両親の言葉に走り出して、ランドセルを選ぶ。
コレがいい!と選んだのは薄紫のランドセル。
一番気に入っていたのに、両親は何度もそれでいいの?と聞いてくる。
どうして?なにか間違ってるの?
段々と自信が無くなっていく私を見て、両親は心配したんだろう。
あなたが選んだならそれでいいんだよ。
とても素敵な色だね。
私は薄紫のランドセルを抱きしめて、コレがいい!ともう一度笑った。
私の好きな色。
私の心を彩った色。
あなたがいたから
あなたがいたから、私は今日も息をしている
相合傘
突然降り出した雨を見上げてる生徒たちを横目に、
鞄にしまい込んでいた折りたたみ傘を広げる。
念のため入れてて良かった、と安心しているとクラスメイトの彼が雨を見上げていた。
いつも見ていることを気付かれないようにしていた、私の好きな人。
今は傘がなくて困ってるし、声をかけても良いかな。
いや、他の人もいるしあんまり話したことないのに迷惑かな。
そうやって悩んでいると、一人の女生徒が彼に話しかけた。
彼が頷くと、彼女の愛らしい水色の傘に二人が並んで雨の中を歩き出した。
彼が傘を持ってあげてて、彼女が濡れないように傘を少し傾けていた。
遠目からでも楽しそうな二人だった。
私は二人を見ないように傘を前に傾けて歩き出した。
歩くたびに、ぽっかり空いた相合傘は寂しさと恥ずかしさで埋まっていった。
落下
前に好きだって言ってたよね。
そう言って渡されたのは、お菓子のおまけについてくるマスコット。
あくびをした猫が愛らしく手の上に乗っていた。
よく覚えてたね。
本当にちょっとした会話だったから、笑って彼に言った。
君との話だから覚えてたんだよ。
猫の頭を撫でながら君は笑う。
うわ、やられてしまった!
未来
君が大人になる頃に、
その言葉が希望と幸福の意味になりますように。