プリクラに「ズッ友」「ニコイチ」と書いて
一緒に映っていた友達は
もはや今の連絡先さえ知らない
ずっと親友でいたかった相手とは
コロナ禍以降、一度も会えていない
年賀状で「今年こそ会おうね」と
定型文を交わすだけ
せっかく渡したいものもあるのに
食事にも誘えずにいる
絵がとても上手なおばあさまがいた
息を呑むような色使いで
繊細で美しい花を描く人だった
プライドが高く、接し方に気を遣う人だった
いつからか、おばあさまの描く花の
色数が格段に減った
緑一色でヒマワリやタチアオイを描いていた
性格はすっかり丸くなっていた
もしもタイムマシンがあったなら
未来を見に行ってしまうのは怖い
どんな苦難の人生が待っているか
知ってしまうのは恐怖すぎる
過去の後悔は山ほどある
でも過去を変に弄ってしまって
必ずしも未来がいいように変わるとは限らない
強いて言えば
歴代の愛猫をもっと病院に
連れていけば良かった
それだけはやり直したい
ただ、最期を一緒に家で過ごせた
この結果も変わってしまうだろうか
とても悩ましい
タイムマシンなんて無くて良かったかもしれない
「今一番ほしいもの」
恋人、お金、才能、賞賛……
いや、一番は自己肯定感だろうか
簡単そうなものなのに
「ねえ、そういえば! 私の下の名前、知ってる?」
僕は、プリント等で見た彼女の名前を思い出した。
「えっ……と、彩さん、だっけ」
「知っててくれたんだ! 嬉しい。でも下の名前にさん付けなんて、なんか変な感じ! 彩でいいよ」
「いや、それはさすがに……」
「それにね、聞いて! 大発見なの。彩っていう漢字ね」
彼女は、自分が見つけた宝物を人に見せる幼い子供のように、目をきらきらとさせた。その表情は、本当に輝いて見えた。
「音読みするとね、サイになるの。サイだよ、佐井くんの名字とお揃いなの」
ただ、そんなこと。それだけのことを、こんなにも嬉しそうに話してくれる。その笑顔はあまりにあたたかくて、まるで陽だまりの中にいるようだった。
自作小説『感情喰い』より