季節に箔を付けるために、その時期にあった服を着るために衣替えをするのだが、なかなか温度がいい感じにならない、上を向けばどこまでも続く青い空、動けばまだ暑い。嗚呼、衣替えをしてやるぞという、私のやる気が去っていく。行かないでと言っても、寒いなら、その辺の羽織で何とか間に合うでしょ、と去っていく。
澄みきった空気の秋晴れの帰り道に、私らはお互いの気持ちなど考えず、すれ違いをしだした。喧嘩の始まりはいつも自分から、声を荒げて、声が枯れるまで、余計なことを言ってしまった。今思えば、割りとどうでもいいこと。
右から帰るか、左から帰るか、家に着く時間は違うけど、一緒に居れる時間も、行き着く先も、同じなのにね。私は、遠回りして星空なんか見たりして、あの人と過ごしたかった。あの人は、普通に帰って、家で今日の出来事のやり取りを、一緒に振り返って楽しく過ごしたかったらしい、アナタならどっちの意見に近いだろうか。
初めてあんたに起こされた時の、あのやわらかな光が忘れられない。目覚めた時に見た、あんたの安心した顔が脳内に刻まれてるから、忘れたくても忘れられないのだ。これが、刷り込み効果だとしても、心が温まるから、まぁ、悪くはないかな。
「あっははっ」
つい笑いが出てしまう。そんなに熱く、鋭い眼差しで、見つめないで欲しい。まるで、此方が悪者みたいじゃないか、こっちは何度もキミに警告したのに、それを無視したのは、他でもないキミ自身じゃないか。なのに、なんで?どうして?なんて言われても、此方が困るだけなんだが、仕方ない、もう一度だけ説明してみようか。これが、此方ができる最後の警告だ。
階段を駆け上がる、高く高く上り詰める。三階の窓から急いで、あの人の姿を捜す。上がった心拍数のことなど忘れて、捜す。やっと、あの人を見つけた時には、あの人は、他の人達と門から出ていく姿だった。ギリギリかは分からないが、諦めずに窓を開け、今は、恥ずかしさなど捨てて、あの人に向けて叫ぶ。