紅の記憶
山に点在する、真赤な紅葉…風に吹かれる度に、枯れ枝が目立ち始める…
毎年見ている光景なのに、その艶やかさとか、秋の彩りの美しさとか、それとともに、儚さも想うようになってきた…
春先の柔らかな芽吹きから、夏の命の謳歌を超えて、やがて次世代へのバトンタッチ…年を重ねる毎に、そんな、自分を重ねて、一人過ごす秋のひととき…
夢の断片
世界は、夢の断片でできている…何故だか、そんな思いが、ふっと湧いてきた…
死にたくないと言う夢、夢を叶えたいと言う夢、知らない事を知りたいと言う夢…
そんな色々の夢は、一つ一つは、叶っていないけれど、それぞれの夢の一部は、叶っている気がする…その夢の断片の重なりが、今のわたしだと…
どんなに願っても、永遠には生きられないし、自分の知識なんて、高々しれている…
でも、夢見る事は、どんな状況でも、自由にできる…夢見る事の連続が生きる証だと、何となく思うこの頃…
見えない未来へ
1秒先に何があるのか分からない…幼い時、思春期の頃、社会に出た頃…
色々な時点で、思い描いた未来…でも、どの未来も、現実にはならなくて、違う現在(今)を生きている…
叶ったものは、人並みに家庭を持ち、立身出世とは無縁のその他大勢の誰か的な道を歩んできた事位で…
未来は見えなくて、不安で、怖くて、不安定で…先々が見えたなら、失敗も、もっと違う現在があるかも知れない…
それが、果たして、幸せな現在なのか、今の私には分からない…
ただ言えるのは、見えない未来を手探りで生きるしか、私には出来ないと言う事…
吹き抜ける風
同じ、吹き抜ける風なのに…夏風とは違う、木枯らし…
夏風は、命の息吹があるけれど、木枯らしは、何処かよそよそしくて、冷酷にひっそり迫ってくる…
冷たい風に、首をすくめながら、乾いた落ち葉が転がる先を、ただ一人見ている…
記憶のランタン
年とともに、だんだんと曖昧になって行く色々な記憶たち…
少しずつ色褪せて、モヤモヤした薄墨の向こうに隠れてしまう…そうなると、なかなか見つけられない…
そんな記憶を探すのに、手元を照らす灯りが必要になる…薄暗い納屋を探す様な記憶の探索には、眩しい光では、記憶そのものが消えてしまいそうで…
少しぼんやりした光が丁度良いくらいで…優しい光は、薄れゆく記憶の端々を辿る事が出来るから…