私は今日も嘘をつく。
「私ね、○○好きなんですよ~」
「良いね、好きなものがたくさんあるのって!
毎日、楽しそう!」
「そうなんですよ!まあ、その代わりめっちゃ忙しいんですけどね!友人の影響で好きになったんです!」
好きなものはいっぱい。
そう言っていれば、私も周りといっしよになれる
から。空っぽの私を隠せるから。
私の「好き」は誰かの真似でしかなかった。
本当の私は 誰も愛せないのに。
誰かに愛して貰える自信もない私は
今日も今日とて 嘘の愛を叫ぶ。
ひらひらと ひらひらと
私も君のところまで
とんでゆけたなら…
_モンシロチョウ_
「俺の事、忘れて良いからね」
黄昏時の夕日の差し込む病室で、
彼がいつもよりもずっと穏やかな表情で
そんな事を言うものだから
私は涙が込み上げてくるのを、ぐっと我慢した。
「君は優しいからね。ちゃんと言っておかないと
何時までたっても墓参りに来そうだし。」
もし私が君の言うような優しさを持ち合わせていたなら、それは君だからだよ。
君こそが、本当に優しい人だからだよ。
そう伝えたいのに。言葉にならない音ばかりが
溢れ落ちる。その間にも、君は話続けて‥
「ストレス溜めすぎちゃだめだよ。
たまには、ゆっくり休んで」
涙もろくなったのは、君のせいだよ。
休める場所は、君の隣だけ。
「幸せになって。元気でちゃんと長生きしてね」
そう願ってくれるなら、どうかいなくならないで。
置いていかないで欲しい。
だけど…最後まで私の願いは言葉にならなかった。
彼が、言わないでといっているようだった。
それから…3年の月日が流れるのは思いの外あっという間だったかもしれない。
何せ、私の仕事人間ぶりは彼のお墨付きだからである。
起きて、仕事をして、帰って、食事して、寝て
、また起きて‥彼のいない今日を生きて行かなくてはならない。
今でも彼の命日には彼を慕う人が大勢集まり
思い出話に笑いながら、時にぽつりと溢れ落ちる涙をぬぐい偲ぶ。
彼は本当にたくさんの人に愛されていたんだなぁ。
そう思うとどこか誇らしい気持ちになった。
彼の墓前で私はあの日言えなかった言葉を伝える。
「忘れてなんかあげないよ、いつまでも。」
「「一年後、また逢おう!」」
「その時は、更に成長した姿で」
「たくさんの大切なものを見つけて」
「いろんな事を経験して」
「泣いたり、笑ったりして」
「数えきれないくらい楽しい土産話を持って」
「美味しいお酒とごはんも用意して」
「「君に笑われないくらい、最高の人生を!」
たとえ、遠く離れていても
消えてしまいたくなるような孤独な夜も
「「だから、それまでくたばんなよ!」」
もう一度君に逢うまで、生きると約束しよう。
今でもたまに思い出すよ。
周りからしてみれば変わった人だったようだけど
頭が良くて、想像力も豊かで、可愛くて、寂しそうな人。私の大切な幼なじみ。
君との帰り道自分たちの手袋で人形を使って、ああでもないこうでもないと冒険に想像を膨らませていたこと。
バイバイした後に君がぽつんと玄関前に座り込む姿がどうしても放っておけなくて、冒険の続きを聞かせてくれと私の家に誘ったこと。
私は君の話を聞くだけでとても楽しかったこと。
君の部屋の窓ごしに見えた恐竜の模型はもう見えないけれど…
大人になった今でも君が好きだったものを見かけるとふと立ち止まる時があるよ。
この広い世界のどこかで君が今日も笑っていてくれますように。
もし、悲しいことがあっても独りで背中を丸めていないといい。君を一人にしたくない人が君の側にいてくれるといい。
私は今でもたまに君を想うよ。
_初恋の日_