昨日まで
手を繋いでいた人が
ひと晩で急に
知らない誰かに
なってしまったようだ

私に向かっていた
高い熱は冷えて
あらわになったその人は
しらじらとした
固い岩のようだった

音で目が覚める
遠い足音
窓の外　緑道を走っている
音が近づく
タッタッタッという音
タッタッタッを想像する
走る事に慣れた
ベテランランナー
今日は気分がいいか
久しぶりのお休み

すこやかな足音
目覚ましがわりに
私も起き出す
今日も涼しい

ショッピングモールの
温度はいつも一定だと思う
歩いたり喋ったりすると
少々暑いが
じっと座っていると寒い

夏の間
さわやかだった
ブルーに水色の
ストライプのスカート
お店の鏡の前で
寒々しく感じる

私の脳の中で
ブルーの似合う
夏は過ぎ去り
オレンジ色の
秋が訪れていた

旅に出る前に
いつも
ガイドブックを
手に入れる

日本だけでも
全ての都道府県の
名前や場所を
言えるわけではない
(それくらいの知識)

日本地図を
メガネをかけて
虫眼鏡を取りだして
顕微鏡を使うぐらい
くわしく知りたい

そういう
気持ちだけはある
旅は続く

白い部屋の中に
後ろを向いた白い猫
白い首輪は
毛にうもれている
テーブルの上に
白いレース糸
編みかけのレースの
ハンカチの縁取り
窓には白いローンのカーテン

もふもふでアミアミで
サラリとして
きらりと光るが
写真に撮れば
白いモノクロの部屋