夫婦ふたりで
広い川の中洲の家に
住んでいたが
今は　昼間だけ
舟で通っているという
そういう人が
いると聞いた

誰にも邪魔されない
昼寝しほうだいの
ただの老夫婦
その自由さが
羨ましいと
ただ　羨ましいと思う

心の中の風景は
目が覚めるまでの
夢うつつの時間に
あらわれる

蝉の声
ことりのさえずり
車が道を通る音
タオルケットの
布の感触
遠い子供の声
通学する小学生

起こされない朝は
ごきげんな私

竹につかまりながら
下まで降りる
子供の私達は
ザザッと駆け下りた
古い記憶の中の
小さな墓地

谷間はひんやりと冷え
朽ちかけた古い民家の
茶色い壁の側を通る
竹も夏草も年々生い茂り
私たちは
山の中の道を見失なう

私の心は
今　ここにある
心臓のあたり

あの人の心も
今　そこにある
でも心は
揺れ動く
明日には
そこには無いかもしれない

私の心も
足首のあたりに
移動するかもしれない
いじけて

お気に入りの
温泉や岩盤浴
たとえ夏であっても
よいものだ

ランタンテラスという名の
くつろぎ処
コミックの本棚の前は
足ツボの床が長々続く

素足のままの子供を
助けようとしたお父さんは
タタラを踏んで
横っ飛び

見た目より
ずっと強力な
綺麗な石の
足ツボです