2年前に迎えた仏壇
お盆という事で
一日中線香を
あげることにする

余っていた
うずまき線香は
絶え間なく煙り
網戸だけの和室の
ふたつの窓から
漂い流れる

電信柱にそって
上へ上へ
遠くの空へ向かう
香の小さな粒は
白檀の香り
今年の夏の中を
拡がって行く

風呂場の床に
漂白剤をかけて
窓を開けようとした時
するりと
ヤモリが入って来た
！マーク1つじゃ
足りない感情
頭がジンとして
体は固まる

最悪で悲惨な状況を
招かないために
まずシャワーで床の上を流す
火バサミを取って来て
ヤモリを挟み
窓の外生垣にむかい
ヒョイと落とす

ジタバタのちっちゃな足は
かわいいが

うーん
やっぱり　無理やわ

原付で　この夏休み
旅に出た君
琵琶湖の近くの
写真を送ってくれた
何隻かの舟と
黄色いベストの釣り人

君が見た景色は
向こうが見えないくらい
広い広い湖だった

言葉にならないもの
気配かな
誰かに伝えようとしても
躊躇する
目には見えないし
言葉で説明もできない

動物は時々
あらぬ虚空を見つめる
小さな虫の羽音
だったりするが
私達にも
備えられた
何かの能力が
あるのかも

真夏の記憶という
お題なのに
真夏の記憶が
少しも思い出せない
仕方がないので
アルバムを
見ることにした

娘の私は旅行先で
ピンクのノースリーブを着ている
きっと真夏だ
それにしても若い
足は太いが
腕はすんなりしている
自分だがうらやましい

その時は
足が太い事ばかりを
気にしていた
腕が細い事を
もっと自慢しても
よかったな