さえずりは
鳥のラブソング
少しの止み間でも
歌う

愛を十分に
知り尽くしたとは
言えないのは
みんなそうかも
しれないけれど

春になると
人もさえずりたくなる
ラブソングを

詩が好きな
文通相手の手紙
青い封筒
小鳥のように
ふっくらした厚み
手紙を開くと
私を勇気づける
丹念な文字

あれから
何年も経つ
いつでも
捨てられる
そう思うので
今は
捨てない

写真館で
赤ちゃんを写すのは
難しいと聞く

たしかに
晴れ着を着た
2歳くらいの子は
あちこち
視線が移る
カメラマンと
女の子
すれ違う瞳

女の子は
カメラのレンズなんて
見ない
そもそも
晴れ着なんて
着たくないんだ

夏休みの
学校のプールは
毎日開放

青い青い
プールの底に向かい
みんなで
横向きに飛び込む

イモリのように
底のコンクリートを
手で押しつつ進む
息を止めて

空は青く
プールの縁は
火傷しそうなくらい
熱くて
みんなで飛び込む夏

ある日　お盆が来て
私はハッと気づくのだ
夏はもう終わると

ボールを投げて
くれたこと
おいでよと
手まねきして
くれたこと
自転車に乗って
ずいぶん遠くまで行った

甘い記憶
幼い　しりきれとんぼの
思い出は
苦さも辛さも
上書きされず
ただただ　甘い
sweet memories