遠くからの鳴き声が
聞こえる
鳥の鳴き声には
詳しくないのだ
ウグイスと
カラスくらいしかわからない

高い場所から
高い音の鳴き声

冬の間は
縮こまっていたのに
春は小鳥を
空の遠くへ
いざなう

春
初めての制服は
青い
芯から青い瑠璃色
白いシャツはかたくて
パキンと割れそうだ

青い女の子達が
連れ立って歩けば
向こうから
白いジャージ姿の
男子が一人
このシチュエーション
どうしたって春恋だ

高校生の頃のほうが
はっきりした未来図があった

山の中に住んで
木で建てた
別荘みたいな家に住む
畑仕事をして
川で魚釣り
のんびりした隠居生活
それが夢だった

なぜか
夢を聞いてくれた友達が
田舎に嫁ぎ
私は街に住んでいる
なんでだろう
ヘビが嫌いだった
からかもしれない

薄い布団を
敷きつめたように
白い
駐車場のまわりぐるり
桜が植っている
先ほどは無かったはず
今は散る時期か

助手席のドアを閉めて
吸い込まれた
はなびら　ひとひら
宙に舞っておちる
床には花びら
私たちは
ひとつかみの桜を
持ち帰ろうとしている

街に
ソメイヨシノが咲く時
路地の奥
川べりの堤防
忘れ去られた
太い枝にも

桜の鮮やかな風景は
街角に
突然現れる
花弁は青みがかり
青空によく似合う